群青

おもひでぽろぽろの群青のレビュー・感想・評価

おもひでぽろぽろ(1991年製作の映画)
3.3
高畑勲作品はリアル。宮崎駿はファンタジー。な感じがした今作。

自分は宮崎駿作品ばかり観てきたので高畑勲作品は隣の〜以来久しぶり。というか食わず嫌いで今の今まで観てなかった。子どもの頃に観ていればまた違った感想だろう。自分は大人になって初めて観た。そして思った、高畑勲も天才だと。

まず、パイナップルやお風呂の真新しさ、エナメルバッグのくだり。
特にエナメルバッグのシークエンスは子どもの意地っ張りで、でも甘えたくて、自分だけ優遇して欲しい(末っ子なら尚更)という子どもが持つ独特の感性をこれ以上になく上手く描いていること。
実写でこれをやるのとアニメでこれをやるのでは全く次元が違う。これを書いているのは良い年をしたおっさんなのだ笑
子役なんていない。
精々声優が子どもがやる、位だ。
なぜ、おっさんがこれを書ける笑
もう時の彼方にとっくに消え失せてしまったあの微妙な感覚をなぜ描ける!?いや、いくら原作あるからと言ってもこれはすげえわ!そりゃ、高畑勲しか無理だ、と宮崎駿が思うわけだ。

もう一つは初恋?の男の子。あの場所であのタイミングで、雨の日、曇りの日、晴れとどれが好き?と。
おれもくもりだーーーぁぁぁあぁぁぁあぁー!とで心の中でガッツポーズ。タエ子と同じく。良い年をしたおっさん(オレ)がパソコンの前で悶える笑
なぜあそこでそれが聞ける!?天才か!?笑
更にラストにあべくんのエピソード。もうここまで来ると完全に作品の虜だ。あべくんの心情はやはり男の子にしか分からない笑

もうそりゃあすごいわ、この作品。ノスタルジーと子どもの頃の繊細な感覚が見事にクリーンヒット。
エンディングがかかってからの思い出のタエ子とリアルタエ子の絡みも微笑ましくそして少し切なくて、もう最高だった。

あと、誰も何も思わなかったと思うが、あべくんのエピソードをした後、雨上がりの道を車を走らせる時、雨でできた水たまりに片輪だけちょっとずぼっと入るのだが、その一瞬を観て、あっ高畑勲天才だわ、と驚愕した笑

道なんて普通に書くよなぁー。
あそこでわざわざ水たまりを書いてそこにずぼっと入る、なんて言ってしまえば枚数の無駄。
いらないのに、入れる。
徹底的なリアルの追求。凄まじい。
原作に入ってんのかな。この一瞬。
こういう一瞬さなら、あとは夕焼けのシーンで土手から立ち上がった時にお尻の土をパッパッパって払う、というのも凄いと思うんだな、うん。
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