stanleyk2001

薄桜記のstanleyk2001のレビュー・感想・評価

薄桜記(1959年製作の映画)
3.7
『薄桜記』
(1959 昭和34年)
大映

凄いものを観た。何度も映像化、舞台化されたのも分かる傑作。

ストーリーは忠臣蔵外伝。登場人物は堀部安兵衛(勝新太郎)。架空の人物・丹下典膳(市川雷蔵)。上杉家ゆかりの娘・千春(真城千都世 )。上映時間80分の作品なのに大長編を観たような感じがある。

丹下典膳は丹下左膳が元になっているようだ。

林不忘の『丹下左膳』は1930年代の作品。五味康祐が『薄桜記』を連載したのは1958年から59年。

映画が公開されたのが1959年。連載中から大映は映画化を企画したのだろう。

市川雷蔵、勝新太郎、二人の映画に占める役のウエイトはほぼ同じだけど心打たれるのは波乱に満ちた市川雷蔵が演じた丹下典膳の生涯だ。

架空の人物の物語なのにすっかり心を掴まれた。脚本は伊藤大輔。

冒頭の堀部安兵衛が高田馬場に駆けつけるスピード感がある移動撮影は「移動大好き」というあだ名を持つ伊藤大輔が撮ったのかもしれない。

伊藤大輔は原作者の了解を得てかなりの変更を行った。

・原作では典膳は左手を失うが映画では利き手の右腕を失う。
・敵の銃撃を受けて片足の自由も失う。

片手片足、歩くこともできない典膳が敵と戦う場面は息を呑む迫力。すごいものを見せられていると思った。

三人の恋愛模様。千春のたどる悲しい運命。とても見応えのあるドラマだった。
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