オルキリア元ちきーた

座頭市物語のオルキリア元ちきーたのレビュー・感想・評価

座頭市物語(1962年製作の映画)
4.5
1962年といえば「椿三十郎」と同年の上映作品。
どちらも鑑賞したけど、私の好みとしては、圧倒的に座頭の市さんに軍配を上げたい。
「用心棒」「椿三十郎」の三船敏郎の三十郎はライオンのようだ。
とにかく強そうだし孤高だし、存在だけで華がある。
一方で、同じ孤高で強い勝新太郎の座頭市は、まるで狼のよう。
同じヒーローでも陰と陽のような違った存在感があり、どちらも魅力的なキャラクターだ。
どちらのキャラも観ていてスカっとする。
それでも市さんには、三十郎には無い「憂い」がある。
背負っているハンデからくるのか、その存在の過去を想像させる「キャラの幅」を感じる。
だからこそ沢山の続編が作られたのだと思う。
ストーリーとしては、よくある「やくざの抗争に巻き込まれる系」なのだが、これも「用心棒」だと「まぁ俺が助けてやるから見てろよ!」とばかりに自分から飛び込んでいく三十郎とは違い
座頭市はなるべく戦いに巻き込まれないように立ち回る。
しかしやむを得ない事情でその仕込み刀を抜かねばならなくなる、という所が最大の違いかも知れない。
登場人物の描き方も丁寧で、コンパクトな時間のハードボイルドなストーリーの中でちょっとしたロマンスまで入れ込んでいるのもニクい。
そして何より「座頭市といえば勝新太郎・勝新太郎といえば座頭市」と言えるくらいの役への入り込み方が物凄く大好きだ。
最後の所で親分に説教をする場面は「椿三十郎」の最後の「ばかやろう!」と対比すると面白い。
座頭の市が、ハンデを持って生きる人間の抱えているものの重さがあのセリフに込められている気がする。