パケ猫パケたん

奇跡のパケ猫パケたんのレビュー・感想・評価

奇跡(1954年製作の映画)
4.1

『奇跡』 (1954)
🇩🇰デンマーク 126分 モノクロ・トーキー


●スタッフ

監督・脚本・編集
カール・テオドア・ドライヤー
原作 カイ・ムンク(小説『御言葉』)
撮影 ヘニング・ベンツ


●キャスト

ビアギッテ・フェザースピル
 (長男の嫁 インガ・ボーオン)

プレベン・レアドーフ・リュエ
 (次男 ヨハンネス・ボーオン)

ヘンリック・マルベア
 (父 モーデン・ボーオン)


●レビュー

キリスト教・プロテスタント派に於ける、静謐な映画🎥であった
宗教に関していえば、触らぬ神に祟りなしていどの認識の、無神論者のオイラなので、この映画🎥を語る資格があるのかどうか、少し疑問符が伴うが、世の中の見聞としての感想

カトリック派は、基本、教会に依拠していれば済むのだが、プロテスタントは聖書と向き合うので、その信仰はより厳しくなるのかも 同じデンマークのプロテスタントなのに、様々な派閥があり、相容れない相克があることに、驚いた
ボーオン家とペーターセン家は、宗派と職業も違うので、恋人同士の結婚は困難で、まるで、『ロミオとジュリエット』みたいな悲劇の香り

ボーオン家の次男、ヨハンネスは、元来優秀で父から厳しい宗教教育を受けていて、将来は牧師、いやそれ以上のキリスト教を活性化する人物を期待されて、育てられていた

まぁ、日本に置き換えると、東大至上主義で育てられたようで、気の毒である
ヨハンネスは、神学の勉強のしすぎ、或いはケルケゴールを否定する原因で、自らをイエス・キリストと名乗り、端からみると発狂したように見える

ヨハンネスへの照明は、薄暗くて、神秘的に彼を見せる、顔立ちも似ているので、まるでイエス・キリスト

観客で泣いている人もいたが、オレは無神論者なので、ややドン引きしたが、そこは信仰の自由を赦そう
『裁かるゝジャンヌ』では、ジャンヌ・ダルクという人物と人生の奇跡に、打たれたが、この『奇跡』にはそこまでには、至らない

長男の嫁、インガが美人👱‍♀️✨、また妊婦🤰だったので、特殊なエロスが生じている

そのインガが、病床に伏して、赤ちゃん👶を堕胎する描写もあってリアルで、驚いた、リアルなところは、流石、ドライヤー監督

さて、インガは死後、ヨハンセンの祈りにより、復活するわけだが、この一連のシーケンスは、映画史上に残るだけあって敬虔で美しい 
スレンダーに成ったインガが、清楚で神々しい美しさ✨

さて、御言葉なので、聴覚の点で、ひとつの指摘をしたい

ヨハンネスがいる前半と、ヨハンネス失踪後の後半の、ドライヤーの演出が微妙に違う点である

前半は音楽は無くて、室内、絶えず時計の針の音が小さく鳴ってる
時計が進むことは、時間が進むことであり、死を意識させる時間軸である
これは、イングマール・ベルイマンの『野いちご』(1957)に承継された演出であろう

ヨハンネスが行方不明になり、家族が原野を探す場面は、詩的でもあり美しい
その光景が、ワイプで繋がれている
(ワイプ 一つの画面を片隅から拭き取るように、消して行き、次の画面を表していく、画面転換の方法)

ここから、映画の演出は微細に変化をする まず、映画音楽がかかること、次に、時計の音が鳴っていないこと

だから、復活という奇跡の演出は、ドライヤーの中ではファンタジーであるのかも知れない
ドライヤーは盲信は、していないのである、世界を重層的に捉えている

この映画では、死神を車のヘッドライトの光で表現している
一方、ベルイマンは『鏡の中にある如く』(1961)で、異質な神のイメージをヘリコプターで描写していて、対を成しているような、ドライヤーに挑戦するかのような凄みである

ドライヤーを観れば、ベルイマンが観たくなる

尚、白い洗濯物の乾くさまとか、小鳥の囀ずりには、少しだけ、神を感じるオイラ🐱




KBCシネマ🎦 (聖地枠)
シネマ2

2024ー27ー21