鬼才、クリストファー・ノーラン監督作品、伝記かつ人類史映画
『オッペンハイマー』 (2023)
USA 180分
●スタッフ
監督・脚本
クリストファー・ノーラン
原作(小説『オッペンハイマー』)
カイ・バード
マーティン・J・シャーウィン
撮影
ホイテ・ヴァン・ホイテマ
音楽
ルドヴィグ・ゴランソン
●キャスト
キリアン・マーフィー
(ロバート・オッペンハイマー)
エミリー・ブラント
(キティ・オッペンハイマー)
マット・デイモン
(クローヴィス大尉)
ロバート・ダウニー・Jr
(ルイス・ストローズ)
フローレンス・ピュー
(ジーン)
ケネス・ブラナー
(ニールス・ボーア)
トム・コンティ
(アルベルト・アインシュタイン)
●レビュー
必見すべき
伝記映画ではあるが、入れ子構造に成っているので、(これも何かの物理法則を示しているのか)、細部までは理解不能
ただし、原子爆弾の恐怖、人類がパンドラの箱を開けてしまった恐怖は、ビジュアルとして描き切っているので、よく伝わると思う
さて、ロバート・オッペンハイマーの
頭脳について、思ったこと
ハーバード、ケンブリッジ、カリフォルニア大学、プリンストンなど、彼の才能を持ってすれば、引手数多なこと
ナチスや、ソ連の原爆の開発速度を、その研究員のメンバーから、即座に予測できること
即ち、量子力学において、メンバーの才能を測れるほどに、能力が抜きん出ていたこと
組織の経営者としても、超一流であり、
「ロスアラモス」を即座に設置するなど、その発想と実現力は、今の一流企業の社長たちを遥かに凌駕することなど
また、実験の被曝による被害も、予見しており、誠にアタマが良すぎる
妻のキティが被曝したようであり、顔色の暗さが怖い
嫉妬から、国家権力をかざして、オッペンハイマーを陥れようとする、あの学者が怖い、コイツもアタマめっちゃいいのに潰そうとする所に、人類の絶望を感じる
共産主義は流行り病みたいだったこと、や、ドイツが原爆を開発するよりは、マシだったと思えること、更に水爆に発展する必然など、描き切っており、その現実が考える程に怖い
宇宙に何らかの知的生命体が発生して、それが進化を遂げて、食物連鎖の世界においては、最後には、大量破壊兵器として、原爆や水爆などが開発されるであろう、それを政治的なシステムで制御出来るかどうかが、更なる進化のポイントとなるであろう、そして、大体が自滅の方に成ってしまう
さて、クリストファー・ノーランは、今まで主に、SF的な映画を撮っていたので、理系監督であったので、今回の人間の深層心理に渡る描写は、ある監督の作品を参考にしたのでは無いか?
それは、町山氏も指摘している、ベルトルッチの『暗殺の森』であろう
過去をカラー、現在をモノクロと、意識の流れを、映像的に分かりやすく撮ること、そして、主人公が逡巡して、罪があるのか無いのか悩むところ、もっとも、『暗殺の森』の方は、主人公が完全に悪いが、ただし、映像的な凄みは『暗殺の森』の方が遥かに凄い
人間は、原子や波動の集合体に過ぎないという描写は『シェルタリング・スカイ』であろう、即ち、人間は所詮、分かり合えない、孤独だということ、この時音楽まで似ていた
音楽に関していえば、長時間の不協和音の連続を聴いたのは初めてかも、ゴランソンの偉業
ラストのオッペンハイマーの後ろから、出てくるアインシュタインの姿にも、鳥肌、即ち運命であり、また、これも『シェルタリング・スカイ』のラストを彷彿とさせる
まぁ、分かりやすいところは、「オープン・ザ・ドア」と言うセリフと、妻が昔の部下たちにツバするところ、『ラストエンペラー』そのもので、ベルトルッチを参考にしましたという姿勢が、素直に表明されている感じで、クリストファー・ノーランも天才なんだけれども、案外いい奴だよね、多分
案外いい奴の天才監督は、スタンリー・キューブリックもそうみたいで、
『博士の異常な愛情』(1964)の頃と、現実の世界情勢は変わっていない
寧ろ、悪化している現実に
また恐怖する
UCキャナルシティ博多13
スクリーン3
2024ー41ー32