きりん

続・男はつらいよのきりんのレビュー・感想・評価

続・男はつらいよ(1969年製作の映画)
4.0
個人的な2作目の見所は寅が実母と対面することだけでなく、かつての恩師と話す姿がまるで父と息子のようなところ。
語らい笑ったり悲しい時は共に泣いたり叱られたり甘えたり、珍しく全部素直に聞き受ける寅は子供のよう。
酒が進み弁舌がとまらなくなる先生の後ろで寅は人のおかず(アジフライ?)まで拾い上げてパクパク食べたりなんかしてて、共に過ごすシーンが見ていてたのしかった。

救急車で入院したと思いきや警察に連行され心配させてばかりな寅が、満男が生まれた祝いにと金欠でも5000円札を渡すところはジーンとした
劇中とらやにかけられたメニュー表がアイスクリーム30円、サイダー50円という当時の物価で考えると、妹へ目一杯のお祝いの気持ちがわかる。

一作目で出自について嘆いたのは二作目への伏線であると同時に、記憶にない母への憧れや夢を胸の奥底で抱き続け生きてきたのだとしる。寅さんが38歳にしての再会。
負けん気が強く口達者なのは母親譲りだろうか。
一作目で両親に遺恨があった博が寅さんの気持ちに共感し、とらやのみんなにアドバイスしていてよかった

終盤では心の父と実母の両方を心からぽっかりとなくしたのかと哀しく思ったが、
親と子の縁のあたたかさを示唆するような締め方に、胸の奥がじんわりした。
寅の背を押した先生もきっと喜んでいるだろうな…。

寅さんは喜怒哀楽が180度クルクル変わるのが長所であり短所でもあり魅力だが、悲痛な面持ちさえ とらやでのネタになるのが良い。
はなまるきのCMでこんなに笑う日がくるとは(笑)


◇二作目登場の好きな口上 啖呵売
今作のテキ屋は占いが多くサクラ役の子分に言い当てる設定がどれも自身に重ねられたものであるところや、啖呵売のイロハを語るシーンが面白い。


どうです!五百が三百 二百が五十!
ええい!貧乏人の行列だ!
もっていきやがれ!この乞食野郎チキショウ!

さてそこでだ!ね、サクラが一声かける!
「買った!」と こう言うんだよ
でもこれは格好よく 「買ったー!!」なんていうとね、
なんだこいつ慣れてるな とお客がシーンとしてバレちゃうんだ、ね!
そこで!いかにもとぼけたツラで ちょっとこの辺から(腹巻懐ごそごそ)100円札出してさ、恥ずかしそうに「すみませんそれください…」ってこう言うんだよ
すると、こっちが「おう!お兄さん良い買い物したね、さあどうぞ!」って。
恥ずかしそうにその本持ってね、スーッと帰るふりして向こうの角で待ってるんだよ
でお客が全部帰っちゃう、
持ってくる本をこっちへ、俺は100円やる
これ何回も何回も繰り返したらいいんだよ ねっ

大したもんだよカエルのションベン
見上げたもんだよ屋根屋のふんどし

そこの若いお方、あなたの生まれ年は?
昭和25年です
25年はかのえのとら!この干支の方は両親の縁うすく、幼少より苦労するひとが多いという干支であります。あなた両親がいないね?
はい…ほんまや!よう当たるわ!

この干支の方はどことなく気品があり、そして頭もよいのが特徴とされています。
たまたまそうでない場合もあります!
当たるも八卦当たらぬも八卦
人の運命などというものは誰にも分からない
そこに人生の悩みがあります
きりん

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