たにたに

ボーイズ’ン・ザ・フッドのたにたにのレビュー・感想・評価

ボーイズ’ン・ザ・フッド(1991年製作の映画)
4.0
「アメリカで黒人が死亡する率は20人に1人。その大半が黒人同士によるものである。」

そんな説明から始まる今作。

白人から受ける人種差別を訴えるでなく、まずは互いに歪み合うのはもうやめようよ、というお話なのである。

ウエストサイドストーリーのような派閥争いがあって、気に入らない奴は銃でぶっ放して殺すという事件が当時は相次いでいた。

黒人であるというレッテルから、まともな職業に就くのも難しく、貧しく治安も悪い土地に暮らす彼らは、自分の身は自分で守らなければならない。

主人公のトレの父親は、厳格で、自らの若かり頃の過ちや失敗を、子どもには経験してほしくないという優しさがある。
トレ自身も、それにならい、挑発に対して手を出すのでなく、身を守るという賢い選択をできる人間に成長した。
黒人だからという理由で、警察に怪しまれたり、無責任に銃を突きつけられたりする。その度にトレは怒りを押し殺して、悔しさで涙するシーンもある。

しかし、それを抑えきれない事件が起きてしまう。大学のスカウトを受け、夢を持って、努力していた友人が罪もなく他の黒人グループに銃殺されるのだ。

一旦は怒りが最高潮に達して銃を片手にした彼だが、父親の教えを忘れず、気持ちを押し殺した。

ラストにトレの小さい頃からの友人ダウボーイが言っていたことが心に響いた。
世界中では、毎日のように殺人事件がニュースになっている。でも、俺らの住んでいる地域の殺人事件は話題にならない。

結局、芋づる式に復讐が連鎖して、誰かが止めないといつまで経ってもこの黒人同士の殺し合いはなくならないのだ。と。


声をあげるのは大事だけど、手を出してしまうのは間違っていますよね。暴力で解決することなど、あり得ないのです。悲しみを生むだけ。

現代に置き換えると、
SNSの発展で、我々日本人もお互いに誹謗中傷して、匿名を良いことに銃口を相手に向けてしまっているのが本当に悲しくてならない。
なぜ、同じ人間なのに歪み合う。

まだまだ差別って、なくならないなぁとつくづく思います。
たにたに

たにたに