たにたに

アメリカン・フィクションのたにたにのネタバレレビュー・内容・結末

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

✨2024年28本目✨

黒人に対する差別、黒人であるから受ける気遣い、黒人のステレオタイプに対する世間の印象。これら全てを皮肉り、コメディ映画として仕上げている。
なんといってもラストの演出はアジア人の我々もゾッとする展開です。

黒人であるモンクは、大学で文学を教えている。その際に、小説に出てくる黒人差別用語を述べたことで、白人生徒が違和感を持ち退場。モンクは事実上クビになる。
確かにこのご時世、差別用語は御法度だ。
しかし、彼自身の言葉ではない。小説を語る上でその言葉が気になってしまうのは黒人よりも白人であるとはなんと皮肉なことか。

モンクは新作の小説を書き上げるも、黒人らしくないという理由で蹴られる。
一方で、黒人の女性作家の作品「ゲットーに生きて」が、黒人社会のリアリズムを描いていると評価され人気を得ている。
一体黒人らしさとは何だ。
プライドが許さないモンクだが、ふざけて適当に世間が思う黒人のステレオタイプを題材にした犯罪小説を書き上げ、代理人に提出するとなんと出版社から好印象を得てしまう。
代理人は彼を説得し、実体験に基づくものと嘘をつき販売が決定されてしまう。
そして、文学賞選考にも選ばれてしまい、そして皮肉なことにモンク自身が選考委員に選ばれることに。
昨今のアカデミー賞のアジア系映画受賞の流行とかそうゆうのも皮肉ってます。もちろんアジア系ということに限定して述べているわけではありません。黒人、マイノリティ、ユダヤ系、など多様性が重視されています。ノミネート作品は素晴らしいものばかりです。しかし、どこか気遣いが受賞に影響を与えている印象はありますよね。

トムホ主演のブロードウェイ版ロミジュリで、ジュリエット役が黒人女性に選ばれたことにとんでもない批判が相次いでいると聞きます。また、アリエル実写版なんかでも黒人が選ばれたことに原作改変だ!と話題になりました。たいていそうゆう批判の中には、「黒人は黒人オリジナルの作品を新しく作れば良いじゃないか」と言うのです。これを見るたびに思うのですが、あなたたちの言うオリジナルって「自分の領域から踏み出るな」と言ってるのと同意じゃないかと思ったりします。黒人に対するステレオタイプ、女性に対するステレオタイプ、アジア系に対するステレオタイプ。"らしい"ものを作れって。
女性らしく振る舞え、日本人らしく振る舞え。多様性を意識していると信じている人ほど、その人の属性について固定的に考えがちです。黒人が白人と同じ音楽の趣味があったり、同じ服装を好んだり、同じ役を演じたりするのが果たして悪いことなのでしょうか。

話を戻します。
ただのその辺のおじさんが、身バレしないようにスラングとか使って出版社と商談するシーンは笑える。
出版社の人間も完全にクレイジーで、多様性の捉え方を完全に取り違えている。
しかし、それが結局世間に受けてしまう。
モンクは身を隠しながら、こんな腐った小説が評価されてしまうことに違和感と反発を覚えるのである。

もっと、コメディ要素強いのかなと思いましたが結構メッセージ性が強くて圧倒されました。ドールテストの写真なんかはまさに。
黒人の男の子が、白人と黒人の赤ちゃんを見せられ、どちらが優れているかと聞かれている写真だ。その男の子は白人を指さしている。このテストは、子供でさえも、白人優位だと植え付けられてしまっていると証明しているのだ。

ラストには突然の銃声音が鳴り響くが、それは小説の映画化がまさに進んでおり、その構想を考えている彼の頭の中だとわかる。
そして白人監督に媚びているモンク。
飲み物買わされパシられるアジア人。

日本では配信スルーされてしまいましたが、もったいないですね!
たにたに

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