たにたに

スケアクロウのたにたにのネタバレレビュー・内容・結末

スケアクロウ(1973年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

✨2024年23本目

ジーンハックマンとアルパチーノの、ヒッチハイク取り合いシーンからスタート。
お互いに牽制し合いながらも、心を開かなそうなジーンハックマンと無邪気なアルパチーノの対比が面白く映し出され、そして意気投合していく、というロードムービー。


ピッツバーグで洗車業して生計を立てられる算段のマックス。手を組んだ2人だが、アルパチーノ演じるライオンは船乗りのために、妻を置いて5年間家を出ていた。性別も知らない自分の子どもに会うためにプレゼントを持って途中デトロイトへ寄りたいと申し出る。そうして2人のヒッチハイクと無賃乗車の旅が始まる。
カフェやバーに入ると、気の短いマックスは他の客と喧嘩を始め、それをいなすようにライオンがふざけて見せる。一見相対する2人は、徐々に絆を深めていく。

この映画のなんとも言えない切なさと良さは、支え合ってバランスを保っていたものが、第三者の言動によって崩れ落ちていってしまうこと。
妻に電話して、「子どもは死んだ」と嘘をつかれたライオンはその後、精神を病んでしまう。噴水近くで遊んでいた子供達といつものようにふざけていたライオンが、男の子を担いで噴水に飛び込んでいくシーン。「洗礼するんだ!」と。このシーンにはとにかく彼の痛みや後悔を感じられて、心を掴まれてしまった。
病院に連れて行かれたライオンは寝たきりに。動かず反応もしないたった一人の友人を目の前にして、マックスも錯乱してしまう。
やっと心を許せる相手ができた。洗車業のパートナーがいなくなってしまう。無口だったマックスも彼と出会って確かに変わった。

そんな2人の旅がここで終わりかと思うと非常に切ないのである。

ライオンは言っていた。
かかしは、カラスに笑われている。
だから同情して畑を荒らさないのだと。
ライオンの時折見せるおふざけもその一種なのだろう。馬鹿になれば、その場は不思議と収まる。

マックスは笑われてなんかないさと返す。
だけど、マックスもふざけて見せるシーンが訪れる。それはライオンを引き留めるときだった。大切なものを手放さないように、笑われることを恐れるのをやめた。

でも目を覚さないライオンを前に、マックスはかかしでいることなんてできない。
ただ立って彼を見送ることしかできないのだろうか。ジワリジワリとその悲しみが押し寄せる。
たにたに

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