たにたに

怪物のたにたにのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

✨2024年24本目✨

奇しくも2023年夏に諏訪湖へ旅行を行っていたため、病院!あの場所!!なんて思いながら鑑賞。「君の名は」の湖のモデルとも言われており、非常に美しい景観なのです。

学校の屋上から諏訪湖を眺めるシーンは最高のロケ地だと証明してくれている。
その屋上に立って今にも飛び降りそうな男は学校の先生である瑛太演じる保利。彼は物語の中でガラッと印象の変わる人物として描かれています。

さて、メインの登場人物。
小学校の保利先生。
その学校に通う麦野湊(みなと)。
湊のシングルマザー麦野早織。
湊のたった1人の友達の星川依里。
学校の校長、伏見。

この物語は、主に早織、保利、湊の3人の視点を順に描いていく。それぞれ違和感ムンムンな伏線がはられ、その3人の視点が合致する時、奇妙なカタルシスを得られる。そんな映画体験。

息子の湊は、突然運転してる車から飛び降りたり、「豚の脳」の話をしたりする。
どうやら湊が保利先生からいじめを受けているという疑念から、早織が学校に押し掛ける。
しかし、みんなおかしい。
校長は説明責任を果たさず、目も合わさずその場を穏便に事務的に済まそうしているただの謝罪モンスター。
保利先生は、納得いかないのか適当な態度をとっている。
そりゃ早織はイラつくでしょう。
緊急で保護者会が開かれ、保利は虐待の事実を認め、メディアに追われることになる。

場面変わると、保利先生視点へ。
彼はどう見ても生徒から愛される先生のようです。彼は星川が麦野湊にいじめられてるのではと疑念を抱く。
湊が怪我をしていたのも、星川との喧嘩を止めた時に肘がたまたま当たってしまっただけ。湊が保利から「お前の脳は豚の脳だ」と言われたという供述も、湊の友達星川が父親から言われていたことを捻じ曲げられただけでした。しかし、周りの教師や校長は守ってくれず、"そういうものだ、仕方ない"と謝罪会見を開くのです。そんな折、子どもたちの作文を見つけると、湊と星川の関係性に気づき、保利は湊の元へと雨の中飛び出します。
「麦野!ごめんな!お前はわるくない!」


湊は、いじめられている星川を守ると同じようにいじめられるかもと黙っているしかない。しかし、外では仲の良い友達だ。森の中のトンネルの先にある廃列車は2人の秘密基地となり、2人の関係性は友達以上への感情を持つようになっていく。
「怪物だーれだ」おでこにあるイラストの生き物を当てるゲームをする。
ある台風の日、2人は自分たちの秘密基地の様子を見にいく。そして、土砂崩れに巻き込まれたように思われる。


私達の先入観を巧みに操作させる様々な伏線が点在しており、非常に面白い。
最後まで真実が分からず、考察に任される。
他人からの噂話によってコロコロとその様相を変えていく物語体験に思わず感心のため息が出た。

作品のタイトル通り、我々に内在する"怪物"という感情への気づきを与えてくれる。
自分の意見を正論として押し通したい心。
自己保身。
それによって犠牲になる人への世間からの穿った視線。
大人のエゴに翻弄される不自由な子どもたち。

怪物はどこから生まれ、そして何者なのか。
怪物だーれだ。
たにたに

たにたに