リッキー

ミッドナイト・イン・パリのリッキーのレビュー・感想・評価

ミッドナイト・イン・パリ(2011年製作の映画)
4.2
833本目。
「ラウンド・ミッドナイト」を鑑賞後、昔のパリ絡みの作品として本作を鑑賞しました。
オープニングはセーヌ川、エッフェル塔、モンマルトルなど名所を中心に美しいパリの映像が3分以上ジャズに乗せたイメージ映像が映し出されます。
パリの宣伝用プロモーションかと疑うような、誰もが憧れを持ってしまいそうなパリの映像です。
映画宣伝にはゴッホ『星月夜』のデザインが描かれているが、作品中はゴッホ現役の時代にスリップすることはなく、印象派の連中も登場しません。
しかし、セーヌ川に浮かぶオレンジのライトは『星月夜』をイメージさせてくれています。
このロマンチックなパリのイメージは映画全編を通して、描かれています。

この映画では対照的な手法が描かれています。
アメリカ人はヨーロッパ、特にパリへの憧れが強いと言われています。
『巴里のアメリカ人』や『パリの恋人』といった往年のクラシック映画などアメリカでは伝統的にパリを舞台にした映画が多く製作されています。
そんなアメリカ人像がギルに投影されています。
逆に映画の中ではそういった芸術の都パリとは無縁の現代の上流階級のアメリカ人を描いた人々を婚約者イネスと両親です。

婚前旅行先のパリに滞在するこの街は、庶民的なパリとは程遠い高級なエリアです。高級なホテル、レストラン、エッフェル塔が見える屋上でワインの試飲会など、お金持ちの視点でのパリが描かれています。
その一方で、ギルが一人で散歩し、過去に迷い込むシーンのパリは庶民的な地区です。
監督は高級なパリと庶民的なパリを登場人物に合わせて対照的に描いています。

「ミッドナイト・イン・パリ」の最大の魅力は、1920年代にタイムスリップしたことにより、コール・ポーター、ピカソ、フィッツジェラルド、ヘミングウェイ、ダリなど、1920年代のパリで活躍した歴史上の人物がたくさん登場することでしょう。鑑賞していて主人公と彼らとの交流がうれしくなり、文学や美術への造詣が深かったらもっと楽しめたのでしょう。名立たる芸術家達と浮名を流した魅力的なヒロインとのロマンスも素敵です。

ギルは「過去にカリスマを持つ」と信念を持っており1920年代というパリ黄金期に憧れていたが、その時代にタイムスリップしてみると、1920年に生きる人は、「こんな時代が黄金期?」と言います。「1890年が黄金期」と憧れている心魅かれた女性と1890年にタイムスリップすると、その時代の芸術家は「ルネッサンス期が一番良かった」と訴えます。結局、ギルはどの時代においても現状の人生とはつまらないことを体感することができました。

マドレーヌ・スワン、マリオン・コティヤール、レイチェル・マクアダムスなど出演者は当時の旬で豪華な女優陣を起用しています。
彼女たちも調和を乱さない良い演技でした。

この映画は内容がどうこう結果を求める映画ではありませんね。芸術が好きでパリが好きな人にはたまらないのではないかと思われます。

パリ旅行に行きたくなってしまうようなパリの魅力満載の小粋なロマンティック・ラブ・コメディーでした。
リッキー

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