リッキー

ル・アーヴルの靴みがきのリッキーのレビュー・感想・評価

ル・アーヴルの靴みがき(2011年製作の映画)
3.8
1019本目。190607
「貧しき善人には奇跡が訪れる」
移民問題を取り上げた作品です。アフリカから命懸けで密航してきた少年に対する見返りを求めない善行が、最後に奇跡を生むという、お伽噺のようなストーリーです。
脚本はかなり大ざっぱで、靴磨きで生計を立てているような老人が、どうして少年を匿うのか動機がはっきりしていなかったり、老人の妻の病気に対しても具体的な症状に触れることなく、ただ調子が悪いという一言で説明してしまっています。
それでも一気に最後まで観させてしまうのは、この監督の演出法が巧みなのでしょうね。
台詞も少な目で、台詞の代わりにやたらと煙草とワインの飲酒のシーンが目立ちます。
おそらくこれらのシーンで登場人物の心情を描写しているのでしょう。
近年、深刻な社会問題となっている移民については賛否両論があると思われますが、一般市民にとって目の前で困った人がいたら, つい手を差し伸べてしまうような人間の本質が描かれています。

余談ですが、私が子どものころに、大人になって革靴を履くようになったら, 本作のようなベテランの路上靴磨きを体験したかったことを想い出しました。しかしその夢は未だに果たされておりません。上野、御徒町および新宿など、昔は大勢いたような覚えがありますが最近は見かけなくなりました。彼らは絶滅してしまったのでしょうか。もちろん現在でも店舗での靴磨きサービスはありますが, 靴を履いたままきれいに変わっていく様を観察したかったし, 会話も楽しみたかったです。靴炭やクリームの香りに大人を感じさせられて、憧れでした。
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