Azuという名のブシェミ夫人

ミッドナイト・イン・パリのAzuという名のブシェミ夫人のレビュー・感想・評価

ミッドナイト・イン・パリ(2011年製作の映画)
4.3
待ちに待ったパリ旅行を来週に控え、テンションをより高めたくて再鑑賞。
それを抜きにしても、とっても好きな作品です♡
昼間のパリも美しいですが、雨に濡れる路面に街燈の明かりがきらめき反射する真夜中のパリが素晴らしい。
ゴッホの『星月夜』を使ったジャケットセンスも素敵♡

ただでさえ素敵なパリの街を、訪れるだけでなくタイムスリップまで体験しちゃうファンタスティックなひととき。
タイムスリップの仕方がどうだとか、タイムパラドックスがどうだとか、そんな事はどうだっていいウディ・アレン爺。
うん、私もそんな事どうだっていいと思うよ。
ウディ爺にとってこの作品をSFファンタジーにする事は、『主人公の人生見直し旅行』を描くのに必要な幾つかある手段の内のひとつに過ぎなかったんでしょうね。
もちろん、それはとびっきりスペシャルなひとつですが。
本作はウディ爺にしては観客に寄せてきてて、とても分かりやすい作品に仕上がってる印象ですね。

フィッツジェラルド夫妻にヘミングウェイ、ピカソにダリ!!他にも大勢の豪華なあらゆる分野の才人たちに囲まれて、みんなが親しく相手をしてくれるって、なんて楽しいんだろう♪
その唇からこぼれる言葉が全て格言になるようなヘミングウェイのキャラクター、あとビジュアル的にはやっぱりエイドリアン・ブロディのダリがソックリで大好き!笑
エイドリアン・ブロディのあの下がり眉が特徴的な顔は、こういうコミカルな作品の場合にはどこかアニメチックなキャラクターに見える素敵フェイスですよね。
私はキャシー・ベイツが演じたガートルード・スタインに詳しくなくて、サッパリしていてどこか男前な女性だなと思ったのだけれど、調べたら彼女はレズビアンでゲイの世界の先駆者だったのですね。
ふむふむ納得。

博識披露の友人ポールがウザーーーーい!!笑
他者の意見を聞き入れようとしないし、絶対イヤだこんな男。
そして、それにウットリしちゃう婚約者イネスにも超絶イライラする。
レイチェル・マクアダムス可愛いけど、この役はめっちゃ腹立つよ・・・こういう女性苦手。

懐古主義な主人公ギルは現代の自分を顧みないで、異郷の過去に存在した美しい部分ばかりに心を奪われている。
確かに素晴らしいのだけれど、それは『イイとこ取り』してるから。
ギルが夢中になるあの美しき時代や人々にも、それぞれに悩み・不満があったり、私たちが知る由もない悪い部分だって存在する。
それは何も過去にタイムスリップするまでも無く、現代の個人個人にも言える事で、全ての内情を知らずとも表に露出している他者の輝かしい部分だけを見て羨やんでしまったりするのです。
その正体から目を逸らして上辺だけを羨望せず、良し悪し全てを知った上でもなお心に華々しく受け入れる。
それこそ本当の憧れではないでしょうか。
ギルは多くの才人たちと過ごしたことで、きっと物事の本質を見極める力が身についたのでしょう。
そんな彼にご褒美のような穏やかなラストシーンがとても好きです。

パリも日本人にとって憧れの街であり、よく『思ったより汚い』とか『フランス人が冷たい』だとか、行ってガッカリした様な話を色々耳にしますが、そういうの全部引っくるめて受容して私なりの『憧れのパリ』を歩いてこようと思います。
そして、改めて自分の故郷日本という国に想いを馳せたい。