ベビーパウダー山崎

レインボウのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

レインボウ(1989年製作の映画)
3.5
幼きころ虹を見ては走り出すような、いたって平凡な女の子がおとなになり個人の尊厳を求め積極的に行動していく。性別にかかわらず自由に恋愛し、女性だからと満足に働かせてもらえない環境に憤り、結婚で自らの可能性を潰されたくないと当然の主張を繰り返すが閉鎖的な男性社会では相手にもされず、へし折られ傷つきながらも空に浮かぶ虹を見てまた走り出す。
抑圧と解放の振れ幅で勝負するケン・ラッセル。異常とも思える過剰な画作りは、その表現自体が保守的な思考、退屈な大衆への挑発。物語を追っているだけの定番なドラマを描いても客は一時の娯楽として消費してしまう、それなら新米女性教師が泣き叫ぶまでクソガキに鞭をふるう唖然とするほどの暴力を見せたほうが何かしら伝わるし、この不当な現実を本気で考えるはず。ケン・ラッセルほど真剣に社会や芸術と向き合っている作家もそういない。刺激、混乱、ショックこそが「映画」。ケン・ラッセル、Respect。