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寒い国から帰ったスパイのPikKaのレビュー・感想・評価

寒い国から帰ったスパイ(1965年製作の映画)
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教職や作家としてだけでなく、
英国情報部の一員としてハンブルクなどでも任務に当たっていた経歴を持つスパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレの同名作品をもとに映像化された本作。

英国情報部の工作員リーマスに密かに与えられた任務や、さらにその裏で動きはじめる隠された真相など張り巡らされたストーリーや罠の巧妙さで敵や周囲の人間だけでなく、読者や鑑賞者をも惑わすような作り込みに魅了されます。

映画などでたくさんの人物や名称などが出てくるとなかなかついていけない方もいるようですが、本作だと原作未読の方でも以下5名の主要人物の顔と名前だけ頭に入れておけば、とりあえずは大丈夫です。

リーマス
ムント
フィードラー
ナン
スマイリー


原作同様に近年のスパイ作品のような派手なアクションなどは殆どなく、人間の内面や緻密に練り上げられた心理戦に焦点を当てて切り込んでいるのが特徴的で、あのドンデン返し展開は最高。
モノクロ映像なのもあって味わいが増します。


映画版は2時間もない短い中、
どうしてもかなり端折った感じになってしまって全体的に物足りなさを覚える人もいるかも…という程度にスムーズ展開ながらも、要点は押さえられているので原作を頭に入れて展開を浮かべながら観ると分かりやすくなると思う。

ル・カレ作品の映画化では近年だと故フィリップ・シーモア・ホフマン主演『誰よりも狙われた男』や、ゲイリー・オールドマン主演『裏切りのサーカス』などもあって、そちらも見応えがあります。
(スマイリーとカーラの戦いを描いた『裏切りのサーカス』は3部作の1作目で、続編はまだ映画化されていないので、これも原作を読むと最終決戦までの全貌が補えます。)
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