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ブエノスアイレスのLATESHOWのレビュー・感想・評価

ブエノスアイレス(1997年製作の映画)
3.2
ウォン・カーウァイ監督は
90年代の雰囲気だけで映画を手掛けてるような
スカした印象があって興味を持てないままだった。
冒頭の白黒ロードムービー風、
ヴェンダースかよと内心毒づき
俺っちスタイリッシュっしょ?と
言わんばかりの構図や映像に
大して心動かぬまま鑑賞していると...
チャン・チェンが登場してから
俄然話が面白くなる。

ボンヤリと意味ありげに空を見上げ
ここでは無い何処か遠くへ、
と漂流する
90年代の雰囲気。
グダグダの異邦人ストーリーに
突如挟み込まれる
監督と俳優、クリストファー・ドイルが
本気を出した詩的で刹那的な場面。
湿度と光、汗ばむ肉体が
カチッと組合わさり
雰囲気至上の映像から
映画としての見事な構図になる。
宿の煤けた共同キッチンで踊り、互いの体を弄るシーンに
俳優、監督、クリストファードイルらの意地と本気が。
火山の噴火と見間違えた
イグアスの滝の空撮。
監督と登場人物らの
野望や衝動の象徴のよう。

香港から地球の裏側の
ブエノスアイレスまで遥々来て
俺たち何やってんだろ?
製作者からも登場人物達からも
焦燥が滲み出ており
どうにもほっとけなくなる映画だった。
灯台に辿り着くと
急に帰りたくなるのは
旅先あるある。
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