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デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリームのLATESHOWのレビュー・感想・評価

4.0
暴威曼陀羅。
途方も無い量のアーカイブとインタビューの眩いザッピング、フッテージのめくるめくコラージュ、更にはオリジナル曲をボーカル抜きトラックで流す大胆なリミックス使用。

ナレーションは無い。
「デヴィッド・ボウイとは結局何者か?」など
彼が地球に不在の今分かったふりくらいしか出来ないのをよく理解している者が手掛けた、sound&visionの壮大な宇宙旅行。

1972年に肉体と知性がひとり21世紀だった、
火星から来た男の言葉は
どれも謎めいていて、鋭く、寂しげで、先進的かつ予言であり、しっかり心に刻もうにも
あまりの量にもう一度観て全て書き記したくなるほどだった。
何せ、彼の言葉が意味するものを考えている内に
次の哲学が語られ出す。
流星群が降る夜空には願い事が追いつかない。
誰一人として彼には追いつけない。

奇抜な衣装に対するくだらないインタビュアーの煽りに笑って返した時垣間見せる確かな知性。
人生を固定化せず、歩くのを知らずに生まれたかのような時代の走り方。
千変万化に生きた彼は飽くなき探究者である。
ひとつの事柄に執着しないのだろう。
肉体をカンバスとし数多の仮面を作り上げてきた。
今日一日を無駄にするのを嫌う彼は、大切なのは何をするかで時間の有る無しや願望は関係ないと答えた。
生き急ぐ愚かさもニヒリズムに着地する迂闊さも避け、カオスが秘める可能性を模索する。
絶えず先に進んだ彼は常に孤独だが、ありとあらゆる場所に身を移し制御すべく自己と向き合っていたよう思えた。

僕は人々の写し鏡だと彼は言う。
僕は自分の好きなものを他の人に好きにさせてしまうのが得意なんだと彼は言う。

もし貴方が立ち止まっているならば。
きっと大丈夫だよと無責任に僕は言ってやれない。

ただ、一日だけヒーローになれることや
君はひとりじゃないってことだけ
歌ってあげられる。

地球に落ちてきてからこの方僕は
常に何かを探すことで知った
「可能性」についてなら
多少は心得ているつもりさ。
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