LATESHOW

ワイルド・スタイルのLATESHOWのレビュー・感想・評価

ワイルド・スタイル(1982年製作の映画)
3.9
薄汚い広告が占領するゼイリブな車内で精神汚染され
毎日鬱気味で出勤させられる陰気な地下鉄。
深夜操車場に侵入しゴミと嘲られ違法行為と承知しながらも
デカく派手でしかし精密なグラフィティでボムる。
始発が発車すると朝焼けに輝く見事なグラフィティに
ゴミだめから見上げた皆が
おお今日のもヤベェなと感嘆する。
それはまさに現実の風景でありながら
映画的瞬間を捉えた場面だ。

朝焼けに、崩れた野音に、ブレイクダンスに
映画的瞬間は連続して登場する。
まるでミュージカルのような
フリースタイルとストリートバスケ。

おらが街で生まれたまだ名前のないこの文化。
白人がアートと銘打つ金儲けの手段に取り込まれる前の
自由気ままな衝動が街全体に息吹いている。

援助を申し出る白人女性への対応等に
偏見を助長させない為の忖度が多少混じっていたとしても
崩れた野音を自分達の手で再建し
パーティーを成功させるリアルな風景や
それを見下ろす主人公ゾロの満足げな笑顔と
ラッパー達ダンサー達の誇らしげな姿勢の前では
大して気にもならなくなる。
踊り、語り、煽り、描き、擦る。
これなら何もねー俺でもやれそうだし
いっちょやってみてえなあ、
そういう気持ちにさせるシンプルで深い部分が
根底に揺るぎなくあると感じ取れたからだろう。
どんな文化もはじまりは大抵そんな感じで
誰でも出来るしだいたい参加可能。

観終わってそのままタワレコへサントラ買いに走った。
現実に起こる映画的瞬間を収めたシーンの連続に
身も心も動かされた。
特別出演しているGrandmaster Flashの
クルッと回って背面プレイするところが
やけにカッコよく見える訳ですよ笑
LATESHOW

LATESHOW