LATESHOW

恋人はアンバーのLATESHOWのレビュー・感想・評価

恋人はアンバー(2020年製作の映画)
3.5
北風しか吹かないようなど田舎で
レズの嘲りを睨み返すあの子は
つかつかと誰より早足で歩いてた。
聞こえないよう生きてきた僕に
気付かないふりして生きてきた僕に
あの子は石をぶん投げて振り向かせた。
OASISよりBikini Kill好きなあの子。
僕のはじまりを今か今かと待ってるあの子。

男らしいとか女らしいとかより人間らしい君と。いやそれよりも。ゲイらしさよりレズらしさより君らしい君と。もっと言えば。「っぽさ」とか「らしさ」なんて本当はどうでもいい。ホモの煽りに怯えて軍隊に入ればなんとかなると根深い呪縛に囚われている君。頑なに気付かないふりをする君と今始まろう。

「らしさ」の先を見つけようとする物語は強いのだ。自分ひとりではどうにもならぬ根深い呪縛はおいそれと解けない。カミングアウトの先もまだしんどかろうし北風は吹き続けるだろう。それでも私は今もちっぽけな町の先を眺めた丘の上で北風を浴びながらはじまったばかりの君を見ているよ。君は大丈夫。

これで自由になったのだ。「らしさ」にこだわって物語を狭める必要なんてないのだ。ただ私が私であるだけで、ただ君が君だと受け入れただけで、これもまたロマンスと人は呼ぶのかなと微笑みたくなるような豊かな物語が、北風吹く中依然まだ続くのだ。
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