まりぃくりすてぃ

誓いの休暇のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

誓いの休暇(1959年製作の映画)
4.3
セオリー通りのあつらえだから、まずは通俗的な魅力に溢れてる。精神性も高め。

① (戦争という)悲劇が土台。
② 鑑賞者を味方につけやすい、清潔で・情に厚く・内外両面爽やかな美男が主人公
③ 魅力的な美女がラブ成分を持ち込む
④ 目的地と期限を明示した上で、なかなか辿り着けなくさせる

冒頭の戦場は嘘っぽくなく、追う戦車の上下反転が多少ともハッとさせてくれた。列車の車輪の再三なアップとかも印象深く、その汽車を何台もくぐっていくバケツ片手の主人公の心情なんかも。。
もちろん、母子の離れ離れのせつなさが最深部の軸。
アリョーシャという“神の子”的愛称が示す通り、未成年兵の彼の親切さと純情さで魅せていく、観やすい映画だ。こんな好男子がいるのかねと首かしげさせつつも、単なるいい子くん物語をそれは超え、「男女間の崇高な友情の形がありうるか」という古典的主題を遠慮っぽい新しさで提示。蛇口からの水を口で受ける美女子シューラ、かっわイイ!
メロ・リアリズムの底の浅さとは違うはず、、、、なんだけど、でも、鑑賞後に残るものは少ないかも。
本当に清らかな人だったら戦争に命懸けで反対する側にいただろうしね。(←酷な言い方だけど、日本のかつての神風特攻隊員を「軍神」とか美化するやつらがいる以上、無意味な主張じゃないから一応チクリしておく。)
アリョーシャはただ、彼なりに“まっすぐ回り道した”だけ。映画も、ムリしない範囲内で頑張って創られただけ。え、この程度でも政府から弾圧されたの? 共産党偏狭すぎ。それにしてもセオリーをはみ出すほどの「戦争へのもっともっともっと強い怨念」があったなら、と贅沢に惜しんでもいい? 『ゴジラ』第一作とか、『原爆の子』のラストシーンみたいに。きっとダメなんでしょうね。。。


それでも何でも、男女間の「崇高な!!友情」を独創的に描ききってて素敵だよ。▼▼ネタバレ▼▼

❶ シューラには本当に婚約者がいる。嘘じゃなかった。ただ、アリョーシャへの恋愛感情が芽生えたから、「婚約者なんていないの。嘘だったの。愛してるからあなたにこう言うの」と言いのこして(連絡先は教えず)去った。
❷ じつは、アリョーシャの方は、郷里に許嫁がいるというのは最初から嘘だった。そのゾイカは、単なる隣家の娘。アリョーシャは、列車内でシューラを(あらゆる意味で)怖がらせたくなくて嘘ついておいただけ。

※❶は誰でも読みとれる。こう解釈しなきゃ単なる若メロドラマで終わっちゃうから。❷は、郷里でアリーシャが母以外相手にしてなかった点に注目すればこそ。人思いの優しい男子だったらゾイカちゃんをついでにちょっとは抱きしめてあげろよ~って思うじゃん。