あなぐらむ

安藤組外伝 人斬り舎弟のあなぐらむのレビュー・感想・評価

安藤組外伝 人斬り舎弟(1974年製作の映画)
3.5
シネマヴェーラ渋谷で鑑賞。

決して良い作品ではない。安藤昇の独白で綴る戦後史であり、暴力にしか生を見出だす術を持たなかった日向謙という戦後が産んだ膿が野たれ死ぬ様を、中島貞夫は抑揚なく描き放り出す。物語さえも既に存在させなかった異形の映画である。

菅原文太扮する日向の虚無はどこから来るのか。
やくざになりながら「やくざ」というシノギはできない無頼として日向は描かれている。片桐夕子(日活から出張。絶頂期23歳)演じる恋人との再会でさえも、彼には言葉はない。渡瀬恒彦も安岡力也もただ死ぬ為に出て来る。切ない。

東映東京製作なので、中島貞夫はいわば外様状態の仕事だった所もあると思うんだが、この人は元々はやくざ映画が得意な人だとは思っていなくて、挫折の青春映画なんだな。だから組織とか抗争とか代紋とかそういうのに興味が無い。サクさんは権力闘争にしちゃうけど。

脚本が松田寛夫(松田定次の養子なんだね)の珍しい単独脚本なのもある。大体、神波史男が共作によってカバーしているこの人の物語を排した虚無、投げやりな生き様が本作には全面に出ちゃってる。
「0課の女 赤い手錠」とか「女囚701号 さそり」と共通なのは主人公が語らない事。ニヒリズムで貫かれているけど、困っちゃうよね。