秋日和

僕は戦争花嫁の秋日和のレビュー・感想・評価

僕は戦争花嫁(1949年製作の映画)
5.0
新婚夫婦がいつまでたっても同じベッドで寝ることを許されない、いつだって何らかの邪魔が入る……映画のラストでは達成されるに決まってるその目的。寧ろ、引き延ばされれば引き延ばされるほど、後に味わう幸福が大きくなるんじゃないかとさえ思えてくる不思議。ホークスの描くコメディは間違いない。
『教授と美女』では数字がひっくり返るけど、本作では性別がひっくり返る(冗談みたいなケイリー・グラントの女装姿と言ったらもう!)。ケイリー・グラントが「花嫁」として振る舞わなければならなくなった途端に、それまで妻に現れていた腰の痛みまでもが彼に移るのだから面白い。
それに、狭い場所の連鎖もお見事だった。最初は苦痛でしかなかったその辛さが、ときに喜びにも変わったりするホークスマジックが嬉しい(例えば、一人掛けの狭いソファに二人で座っても、お互いに好き同士なら苦痛でもなんでもない)。だから、この狭さにはきっとなにか理由があるぞとニヤニヤしながら観ちゃいました。ギシギシ鳴る椅子でなんとか寝ようと試みる彼の虚しい動作はすべて最高!思わず、最後には幸福な空間へ変わりますようにと願いたくなってしまう。
高いところに上がったり、落ちたり、ケイリー・グラントは大忙し。でも、暗闇で見つめあう男女がキスをしようとした瞬間に別室の明かりがついて二人を照らす……なんてことしちゃうから、ただ笑ってばかりって訳じゃないじゃんかと再びニヤニヤ。本当に至福の一本でした。大好き。
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