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タイガーランドのHKのレビュー・感想・評価

タイガーランド(2000年製作の映画)
3.5
トラ年ですから・・・その④
タイトルだけ聞くとなんだか楽しそうなレジャー施設を思い浮かべてしまいます。
「パパ!お正月だからタイガーランドに連れてって~」
「よ~し、お弁当持ってみんなで出かけるぞ~!」

・・・ところがドッコイ!その正体は遊園地でもサファリでもなく、ベトナム戦争のための地獄の新兵養成所だったのです!もちろん、しまじろうもいません。(普通、ジャケ写で気づきますが)

ベトナム戦争の真っ只中、アメリカ国内にベトナムの戦場をリアルに再現し、“アメリカのベトナム”と呼ばれた最終訓練施設こそが“タイガーランド”です。
その過酷さ故にまたの名を“虎の穴”とも言います(←コレはウソ)

ベトナム戦争の訓練と言えば、アメリカの若者たちが殺人マシーンに改造される様子を描いたキューブリックの『フルメタル・ジャケット』の前半が有名ですが、本作は全編を通してその訓練期間が描かれます。
ベトナムの戦場という狂気の真っ只中に飛び込む前のリハーサルですから、その過程も既に尋常では無い狂気をはらんでいます。

なぜか軍規の抜け穴に詳しい主人公は、過酷な環境で限界を迎えた仲間を次々と除隊へと導きます。
地獄から解放されて除隊していく仲間たちの満面の笑顔とピースサインが印象的な風変わりな反戦映画でした。

繰り返し上官に反抗しては懲罰を喰らう掴みどころの無い主人公を当時まだ新人のコリン・ファレル(24歳)が好演しており、これが出世作とか。
同ジョエル・シュマッカー監督の後の作品『フォーンブース』でもファレルは主役です。

地味で後味も決してよくはない映画(正月向けではない・・・)ですが、戦争とそれらをとりまくシステム全体がいかに狂っているかを改めて実感できます。
主人公が訓練中に読んでいる本が「ジョニーは戦場へ行った」なのもギョッ!
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