監督が大傑作『太陽がいっぱい』(1960)のルネ・クレマン。音楽、フランシス・レイということで傑作を予感させる作品でしたが、出来栄えは及ばず、「佳作」程度かなと思います。
詰め込み過ぎちゃいましたね。
途中混乱して捌ききれなくなってしまった場面が多くなって惜しい。
陽光眩い『太陽がいっぱい』と対になるような雨の描写で始まるオープニング。
ここはとてもしっとりした中に、得体のしれないサスペンスを醸造していてとても優れていました。
そしてあちこちに伏線を張りまくって前半が経過するので、じっくり観ていくことが必要なんですが、緊張が持たないんですよね。
物語の本筋から外れたエッフェル塔や凱旋門などのパリ市街の描写が緊張の緩和の役割を担っているのですが、この場面が劇中とても活き活きと感じられるのが皮肉。
ヒロインの可愛いレインコートや、クルミを窓にぶつけるシーン、海岸線のシーンなどフランス映画らしい雰囲気はあるんですけどね。
男の死体が浮かび上がるシーンも、『太陽がいっぱい』ほどのインパクトはない。
脚本が凝り過ぎたのかな・・・