すずき

天使の復讐のすずきのレビュー・感想・評価

天使の復讐(1981年製作の映画)
3.7
NYのアパレル企業で働くターナは、声が出せない女性。
ある日、街のゴミ捨て場で暴漢にレイプされ、家に帰った所を押し入った強盗にレイプされる。
彼女は油断した強盗に反撃し、殺してしまう。
部屋に残されたのは、強盗の死体と、彼の持っていた45口径の拳銃。
その事件以降、彼女は拳銃を持ち歩いて夜な夜な街を彷徨うようになる…

聾唖女性がクズ男どもを殺しまくる、レイプリベンジムービー。
ソフト化はVHSのみと思われ、鑑賞困難な作品を今回劇場で上映してくれて感謝!
「ザ・グリード」とか、ピーター・ジャクソン初期作品とか、鑑賞困難作品の劇場上映もっとやってくれ!

監督は「バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト」のアベル・フェラーラ。
メインビジュアルが尼さんの格好だから、「バッド・ルーテナント〜」と同じくレイプされた尼さんの復讐かと思ってたけど、尼さん衣装はクライマックスの仮装パーティだけなのね。
仮装衣装で男達を殺し回るクライマックスの画がキマってる!
グラインドハウス的なエクスプロイテーション映画だけど、それ以上の物も感じる作品でした。

主人公のキャラクターとその変貌が全ての作品。
人付き合いの苦手な気弱で真面目な聾唖の美女
→正当防衛とはいえ殺人と死体処理、そしてレイプの経験に悩む
→発覚の恐怖から目撃者を射殺してしまうが、「簡単ッッッ!!簡単ッッッ!!」に殺せてしまう事に驚く
→一度ならず二度も人を殺すと、街中でしつこく絡んでくるウザい男に対する行動の選択肢に「殺す」が追加される
→人殺しの才能開花した彼女は「男達から恐怖を与えられる側」から「男達に恐怖を与える側」へと変わる。さぁ、狩りの始まりだ…!

彼女、ホントに人殺しの才能開花し過ぎで、射撃スキルが半端ない。
4人の男に前後左右を囲まれても、3人を即射殺、逃げ出した残る1人をヘッドショット!
たぶん、劇中1発も外してないんじゃないかな。

あと彼女が喋らない、喋れないのも魅力のひとつだけど、聾唖である事が特に物語に絡んでは来ない。
これは文字通り、声を挙げる事の出来ないレイプ被害者や、或いは色んな意味で搾取される女性を暗喩しているのかな。
この時点で、やはり単純なグラインドハウス映画ではない…!

メタファーと言えばクライマックス、主人公に向けられたナイフが、わざわざ下腹部で構えるあたり、どう見ても男性器。
拳銃という暴力(=男性性)を行使する主人公は、やはり暴力でもって対抗される。
しかし、そのナイフを持つのが同じ女性なのが、色々と考えさせられる。

映画のオチにはほっこりさせられた。