ryosuke

十月のryosukeのレビュー・感想・評価

十月(1928年製作の映画)
4.6
@アテネフランセ サウンド版。最初にリマスター時の説明と軽いプロパガンダ?あり。
ワイダの初期とかもそんな感じだが、象徴的な表現の妖しさと社会主義リアリズムのエネルギーが融合した強烈な作品。
冒頭のニコライ2世の像の破壊から一気に引き込む。
ドラマが進むパートにもどかしさを感じるほどに、モンタージュが魅力的。
時折アクションを重複させながら、カット割りでものすごいリズムを生み出していく。本作を見ていると、編集とは断じて単に自然に映像を繋ぐことではないというのが良く分かる。
フラッシュバックに近い速さのモンタージュが強烈。(帝国軍の砲撃、謎のくるくるダンス、はしゃぐ子どもとワイン棚の破壊等)
接写された機械、武器、無機物等の組み合わせも力強い。
跳ね上げ橋が上がっていく中で、髪の毛が分かたれ、馬が落ちていくシーンは鮮烈。
ワンショットワンショットの力もかなり強い。ダッチアングルや遠近感の強調が強いイメージを残す。
ボリシェヴィキの勝利と共に街頭の明かりがつくのも象徴的。
プドフキンの「母」と併映で見たが、本作に比べると流石に見劣りするな。
反革命サイドとキラキラした作り物の鳥のモンタージュが敵に俗悪なまがい物のイメージを付与する。
「神々のシークエンス」はやはり圧巻。古今東西の神々のイメージを象徴的に組み合わせた後、崩壊したはずのニコライ2世の銅像が復活していくアイデアは素敵すぎる。まあその場面ではキリスト教のイメージは出さずに、「野蛮な宗教」とニコライを並べて批判している感じはどうなんだとも思うけど、表現が素晴らしいのでしょうがない。

2019/1/13 4.8→4.6
再見 早稲田松竹 サウンド版 35mm
やはりエイゼンシュテインモンタージュの魅力が堪能できる傑作。ただ後半映像の力が落ちるシーンがあって若干ダレるのがちょっと勿体無いな。初見時も若干の停滞は感じたが今回の方が気になったのはファーストコンタクトの衝撃が無いからかな。
前述した神々のシークエンスについては、見直すと一応シークエンス冒頭に教会やキリスト教のイメージは示してあった。でもやっぱり主に「野蛮な」神たちを滑稽に捉えて敵の批判に用いている印象は強い。
あと像はニコライ2世ではなくアレクサンドル3世であった。
ギラギラした鳥の置物とモンタージュされる敵はケレンスキーだった。「民主主義者」が罵倒語になるのはこの作品で初めて聞いたかもしれない。
今回気づいたが鳥の置物=敵、反革命のイメージは後半にも繰り返されている。籠に入ったフクロウの置物がぐるぐる回る様子に八方塞がりの臨時政府が象徴されている。更に鳥の置物が倒れることで崩壊が示される。
講堂に集まった人々がボリシェヴィキに投票するシーンは勇ましい音楽も合わさってやはりテンションが上がる。ここから「全ての権力をソヴィエトへ!」のスローガンに繋がれてしまうとプロパガンダされちゃうよなあ。
ラスト、ロシアの各地の時間に合わせられた時計が次々に映し出されることで、革命はサンクトペテルブルクだけの出来事ではなく後の全ソ連領を変革するものであったことが強調される。
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