Daisuke

ヒーローショーのDaisukeのレビュー・感想・評価

ヒーローショー(2010年製作の映画)
3.1
[ヒーローとは対局の男たち]

※ネタバレはしてませんが、こうだったら良かったと思うクライマックスを書いてます。

ずっと気になっていた井筒監督のこの作品を鑑賞。
『ヒーローショー』という軽いタイトルとは思えないほどに(おそらく意図的に)リアルで生々しい暴力の連鎖が描かれる。
自分も東京に出てくる前は海がすぐそこにある田舎に住んでいたので、この映画に出てくるような「わんぱくな若者達」にはとても深く馴染みがありました。

「女性関係のトラブル」→「暴力」→「誰かに頼む」→「暴力」→「さらなる暴力」という暴力の連鎖は何度か目にしてきたので、この流れはとても自然でゾクリとするほどにリアルな描写だったと思います。
そう、直接的な暴力描写も生々しいけれど、
この「暴力の連鎖」の流れの方がリアルに感じ、前半から中盤までは目が離せないほどに釘付けとなりました。

しかし中盤から後半にかけて、
物語の吸引力が徐々に落ちてしまったように思いました。
おそらくあのクライマックスが好みではない。
どうも主人公である二人がそれぞれの自己完結にしかなってないように感じたから。

主人公である二人。
一人はヒーローとは対局の生活だがヒーローショーのヒーローを目指していた。
もう一人は「ある男にとってはヒーロー」だった。
だからこそ、個人的に見たかったラストは、

「一般的なヒーローとは程遠い二人の激突」

を描いて欲しかった。
暴力を見ている事しかできなかった男、暴力に飲み込まれた男、彼らの心の叫びをそれこそ暴力で激突させて欲しかった。

その時、
散々彼らを振り回してきた暴力という「呪い」は、彼らのどうしようもない現実のひとつの決着として機能するのかもしれない、
そう思ったから。
Daisuke

Daisuke