やた

ボディガードのやたのレビュー・感想・評価

ボディガード(1992年製作の映画)
3.8
「女性の方が社会的地位が高い男女恋愛もの」を観る第二作。

▼メインキャラクター
女性:歌手であり女優のビッグスター。一人息子がいる。超人気だが世間では性格が悪いというイメージがあるらしい。
男性:フリーのボディガード。過去は大統領はじめ重要人物の警護をしていたこともあるかなりのやり手。

銃声から始まり、主人公がいかに過酷な環境にいるかをしょっぱなから端的に示している。
電気もつけず、立ったまま鍋のまま食事をすることで身体と心を休めることに関心がないキャラクター性を表現している。
レイチェルの登場時、なかなか振り向かなくて視聴者を焦らす演出。

自分に関心がないだろうと思っていた相手が実は自分に関心があると知って嬉しい気持ちになるのは、恋愛の導入としてとても伝わりやすい。

ナイトクラブでのMVお披露目。ボディガード的には危機感のない行為だけど、レイチェルのアーティストとしてのプロ意識の高さがわかる、最初の盛り上がり。
「ステージに立たないと死んだも同然」と言われるレイチェル、つまり彼女にとっては誰かに殺されるかもしれない恐怖に怯えてステージに立たないことは、結局死ぬということなのか。

結局かなり危険な目に遭うけど、自分の仕事を理解してくれてステージに立ったことを咎めないフランク。ここで明確にレイチェルからフランクへの信頼が生まれる。

大男を一瞬でひっくり返して椅子で押さえつけ、その椅子に座るのかっこいー!こういうアクションみんな観たいでしょ?って感じのシーン。
言葉でわかり合おうとしない人間には結局力でわからせるしかないんや。

「男性とデートしたいけど、男性の家にまであなたがついてくるんでしょ?だったらあなたがデートしてよ」まではわがままお姫様っぽいけど、その後の少し照れたような「あなたがいいの」はかわいすぎる!

ここで予想より早く実行犯の顔が明かされる。「こいつを捕まえれば一件落着」とミスリードさせて、つまり「一番危険なやつはこいつじゃない」という示唆でもある。

武士映画好きで62回も観てるのフランクっぽい。ここでも彼の憧れる生き方を端的に表現してるし、この映画に女性を付き合わせる(しかもビッグスター)ところで、恋愛に関して不器用なことがわかる。
そして後で部屋に日本刀が飾ってあることで62回観たのが誇張でないことがわかるの面白いなぁ。

「死ぬことさえ(仕事なの)?」という問いに対して「(レイチェルみたいに)歌えないから」の返しはオシャレすぎる!レイチェルの仕事をいかに素晴らしいと思っているか、スマートに表現してるセリフ。
フランクが過去について茶化すけど、多分かなり苦い思い出があるんだろうなと匂わせるところがストーリーの引きにもなり、よりレイチェルがフランクを知りたくなる理由にもなっているのが上手い。

あの有名なエンダァー、ダンスシーンで男性歌唱Ver.が先に流れてたのは知らなかった!主題歌(?)を小道具として使う上手いやり方。
「とても暗い歌ね」とここでちょいdisが入って、最終的に愛の大きさを伝えるための小道具になってるのが憎い。
そして警護以外で初めての身体的接触。「ローマの休日」と同じく、身体的接触が本格的な恋愛の始まりのきっかけとして描かれている。

守られる側が「心配しないで。守ってあげる」と言うの良いな、と思ってたらえっもうセックスするの!?早!!!
勝手に「依頼人とは仕事以上の関係にならないんだ(キリッ)」みたいなタイプだと思ってたわフランク…
まぁでも自分の家でするのはまだ危機意識高いか…
って服着たら「公私混同はしたくないんだ」って今更かーーーい!!!!

ストイックなフランクが、自分でも制御できないくらい彼女に恋をして…という風には思えないほどのスピード感で致してしまった感がある。自分ならもう少し両片想い状態でじれったい関係を長く作るだろうなぁ。これは時代もあるのかもしれない。

そういえばあのショーをやるぞやるぞのバカが出てこなくなったけどクビにされたのかな?…と思ってたら予想通り終盤に出てくる。

グレッグとレイチェルが出会うシーンで、レイチェルがやたらフランクに気安い(彼が飲んでいるジュースを飲む、肩に手を回す)のはまだフランクとの関係をあきらめていないという意思表示なんだろうか?その後グレッグをお酒に誘うのは明らかに嫉妬してほしいという行動だろうけど。
自分から誘っておいてやっぱ無理!ってなったら冷たくするのあまりにもクズだけど、おそらく百戦錬磨であろう彼女がそんな子供みたいな行動してしまうくらいフランクのことが好きという表現と思える。
そしてフランクもカッとなってゴメスを殴りすぎ。確かにイラッとするけどかわいそうなゴメス。そもそも誰?ゴメス。
そりゃこんなことになるなら警護対象と親密にならな方がええわなぁ。お互いにダメなところが見えて、恋愛感情に振り回されているのがわかる。

フランクが母親のお葬式の日に、今までの警護対象中最重要だった(と思われる)大統領が狙撃された過去があることがわかる。この事実が二人の関係の何かしらトリガーになっているかと言うとそこまででもない気がするけど、あなたは悪くないよと言ってあげたくなる、寄り添ってあげたくなる要因にはなるか。
フランクの服の裾を握って階段昇るレイチェルかわいい。恋する乙女やなぁ〜!こういう細かい描写が良い。

手紙の犯人とレイチェルを殺そうとしている犯人が違うという展開、手紙の犯人を勾留できるのが48時間という制限、オスカー授賞式という大舞台。クライマックスへの道筋開けときました!という流れで、視聴者の期待がグッと高まる仕掛け。

最初にあげた発信機をお守りみたいに舞台に持っていくレイチェル、フランクへの信頼を小物を使って表現していて上手い。
受賞者が書かれているカードが手紙にすり替わっている表現、視聴者をハラハラさせるのにもレイチェルがどれだけストレスを感じているのか伝えるのにも効果的で上手い!

▼クライマックス
初めにステージに上がった時は何も起きなかったせいでレイチェルが油断したところで、カメラマンに扮したグレッグがレイチェルを狙撃。まったく緊張感を緩めてなかったフランクが身を挺してレイチェルを守り大量に出血。凶弾に倒れながらもグレッグを撃つフランク。「この人は私のボディガードなの!」と叫ぶレイチェルの言葉に、フランクへの信頼と愛情が見える。

手紙男出てきとるー!ってことは特に48時間の制限はクライマックスに関係なかったなぁ。
血まみれの主演女優賞カードを大切そうにしまうサイ、怖!この人が黒幕だと思ってたけど、結局セックスできなかったことと、レイチェルの本命がフランクということに腹を立てたグレッグがわざわざプロとしての技を使って殺そうとしてたってこと?こ、小物すぎる…!

飛行機止めて駆け寄るシーン、映画観る前からわかってたのにめちゃくちゃ泣いてしまった…やっぱ王道って良いなぁと思わせてくれる。

大昔、金曜ロードショーでちらっと観た記憶ではクライマックスシーンでエンダァーが流れた気がするのに全然違った。

▼エンディング
明確に描かれていない。けど、フランクはともかくレイチェルがあっさり彼をあきらめる予感がしないので、しばらくつかず離れずで会える時には会って…という関係を続けるような気がする。 
やた

やた