カツマ

スラムドッグ$ミリオネアのカツマのレビュー・感想・評価

スラムドッグ$ミリオネア(2008年製作の映画)
4.0
当時はダニーボイルがアカデミー賞?と思ったものだけど、いまや彼の代表作としてすっかり定着。主演のデヴ・パテルも『Lion』で一皮向けた演技を披露しすっかり成長。インドの土っぽい空気とお金の匂いを作品全体から充満させ、修羅と愛と真実をごちゃ混ぜにした阿鼻叫喚の一大スペクタクルは今尚色褪せない。ダニーボイルらしい反転する映像と細切れになって連続するカットの切れ端がパシャパシャと切り替わり、混沌としたスラムの現実を走り抜けるように切り取ってみせた。お金の雨を浴びるのか、お金の中に沈むのか、そう、人生はこんなにも愛と皮肉に満ちている。

普通の青年ジャマール。彼はいま普通ではない舞台にいる。それはクイズ番組ミリオネアで勝ち上がり1000万ルピーを手にし、目の前の司会者と対峙しているということだ。だが、次のチャレンジへと進むはずの彼を待っていたのは詐欺容疑の尋問。ジャマールは警察にクイズで勝ち上がることのできた経緯を語る。それは正に彼の人生そのものであった。

クイズ番組の回答と人生の回想を交互に行い、今現在から希望ある未来へと繋ぐミッシングリンクを交錯させ、最後の最後で一点に結ぶ。こんな奇跡の連続でも無ければきっとこういったクイズ番組で勝ち残るなんて不可能だ。それこそ詐欺でも働いていない限りは。そんな何万分の一かの奇跡を掴んだ普通の青年の物語。この映画には夢も現実もある。だからこそ、しっかりと夢の続きを見せてくれたラストシーンは素敵でした。インド映画お約束のダンスシーンも朗らかな余韻となって残りましたね。
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