回想シーンでご飯3杯いける

バグダッド・カフェ<ニュー・ディレクターズ・カット版>の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

3.9
僕が度々言っている「映画の中の音楽は単なるBGMではない」という考え方は、この「バグダッド・カフェ」みたいな映画の存在を知っている事から生まれている。

アメリカ西部の砂漠地帯を舞台にしているけど、制作はドイツ。夫婦喧嘩で1人になったドイツ人女性が辿り着いたモーテル兼&カフェで出会う人達と交流を深める様子を描いている。タイトルはその店名である。出演している俳優は数名だし、ロケ地はほぼ店内と周辺のみ。ぶっちゃけ低予算作品である事が丸分かりなのだが、主題歌「Calling You」が作品の存在を特別な物にしている。

無口な主人公の心を代弁するかのように挿入される「Calling You」。画面には訳詞がしっかり挿入される。言葉にするとちょっとクサくなるような気持ちの変化を、音楽が見事に表現していく。

歌っているのはジュヴェッタ・スティールという、ゴスペル系の女性シンガーなのだが、決して有名な存在ではないのに、この「Calling You」だけは映画を通じて世界中で親しまれ、有名なミュージシャンによって多数カバーされるに至っている。映像と音楽の融合が生んだマジックである。

この作品辺りが牽引役になって、日本でミニ・シアターが多数生まれたという意味でも、アイコン的な作品だ。そう言えばミニ・シアターって、CDショップと同じビルに入っている事が多かった(大阪だとテアトル梅田が入っているLOFTにWAVEがあった)。その事実も、映画と音楽が密接に関わっている事を証明していると思う。