地下からきました

バグダッド・カフェ<ニュー・ディレクターズ・カット版>の地下からきましたのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

独特な間とシーンごとの人物の立ち位置の間がとても芸術的でシュール。
色彩が鮮やかで登場人物たちはほとんど物理的にも動かないので、絵になるコマが多く、美術館で絵を眺めている感覚に近い。

ブレンダの前半のガミガミはあの家庭環境と余裕のない(ように見ている)状態では納得できる五月蝿さではある。
感情が先行して言いたいこと纏まんなくて、一回去ってまた戻ってくる所好き。
ブーメランはジャスミンが戻ってくるのを示唆していると思うが、ブレンダのこのクセも揶揄しているのかもしれない。

ルディやデビーの世間から外れた感じ。
デビーは今作においてスパイスの役割を持つ。後半の颯爽と荷物をまとめて「仲良すぎよ」とだけ言い残し立ち去る一匹狼感。
ルディは如何にもな芸術家気質で、キモさと愛着のバランスが絶妙。
このじいちゃんが映ってるだけで面白い。
ジャスミンを描くときに毎回流れる取って付けたbgm好き。

サルの「Oh...Brenda...」と呟く度に、いやはよ戻ったれやwと心の中でツッコんだのは私だけではないはず。
誰の赤子?と思っていたら、ギャンギャンピアノのサロモの子だと分かったときのお前の子やったんかい感。
誰も聴いていなかった演奏をジャスミンが「聴く」ことで能力開花する所好き。

センチメンタルで人見知りでありながら、大胆で懐が深いジャスミン。
彼女の居場所は最初からバグダッドカフェだったのかもしれない。
I'm calling you ルート66という人里離れたはみ出し者の桃源郷にひとりの天使が羽を休みにきたような感じ。

展開も人もほとんど動かず、余白が多い分、各登場人物の心情の流れを丁寧に汲み取ることができる映画。
現代の効率を求める世間とは逆行した浮世離れの強い作品だからこそ好き嫌いが別れるのかなと考察。
個人的にはこの映画はあっという間に終ってしまって、彼らの生活をもっと観たい気持ちだった。