みほみほ

評決のときのみほみほのレビュー・感想・評価

評決のとき(1996年製作の映画)
4.8
🏅2020年50本目🏅

魂にぶっ刺さってきた。ここまで高評価をつけたくなるような名作にようやく巡り会えた。自分の意思で 自分のセレクトで 映画を見続けていると、こうして時に名作に出逢う機会がやってくる。その瞬間の胸のトキメキったらない。

脚本が凄いだとか、映像が綺麗だとか、大どんでん返しだとか、色とりどりの魅力で映画は埋め尽くされているけれど、「評決のとき」はそんな事ではない。ただ真っ直ぐに魂に突き刺さってくるかのようなパワーがあった。

正義の殺人なんかない!それはそうなのだが、奴らのした事は人間の所業ではなく、悪魔のような行為。それを自ら裁いた父親をどう裁くのか……
黒人差別を背景に、勝利の難しさと相手弁護士の皮肉なども含めて見ものである。

掴み取った勝利は信念ではなく、人々の想像力と良心に問うというシンプルなところがまた素晴らしくて、これは私の中でベスト映画に入るような文句なしの名作でした。

法廷の最終弁論で…
【少女は白人でした。】
涙を堪え そう語ったマコノヒー演じる弁護士。そう表現しなければならない現状が痛いくらいに分かり、私は泣き崩れました。

そう表現しないと差別意識や偏見は簡単に消えないのでしょう。あの部分が【少女は黒人でした】では全く響かないのでしょう。

悲しいかな…それが人間。

冒頭で出てくる極悪な二人組…そんな奴らにも彼らを愛する家族が居るという矛盾。そして弟に限っては身勝手な復讐心をメラメラに燃やして、恐ろしい団体と共に恐ろしい行動に出る…

自分の兄さんのした罪の事は、相手が黒人だからと何とも思っていない…本当に最悪なタイプの人種差別主義者で気分が悪くなった。


極悪な二人組の片方(家族関係は描かれていなかった)がダグ・ハッチソンだったが…相方(キーファー・サザーランドが弟役)の悪びれた態度とはまた違って、捕まったあと、彼の目には恐れがあった。
それでも相方に言われれば自分も加担してしまうのだから、嫌な奴に変わりはないのだが、あのダグ・ハッチソンの恐れの目を見たら、この人は悪人役(少し弱いタイプの)を演じると光る方なんだなと思って 驚かされた。あの目凄いな……!(もちろんグリーンマイルでの嫌な役も板についていたが、この作品のダグ・ハッチソンは妙に魅力的だった。)


若かりしマコノヒーは究極にかっこよすぎるし、ホーム・アローン2の鳩おばさん、サザーランド親子、魅力のスペイシー、サミュエルの味、ダグ・ハッチソンの悪人姿、今観てみると豪華過ぎて目が回りそうだったが……、これが90年代の映画なのだから…私がまだ映画を深く知る前の話で、殆ど洋画を観ていなかった頃の映画なのが感慨深過ぎる。。(私がトトロを見て夢と希望を養っていた時にこんな映画が作られていたんだなぁ…)

最終弁論での弁護士のストーリー(物語)は冒頭の映像よりも凄惨さが伝わってきたし、よくも黒人ってだけで、ここまで酷い事を出来るもんだな…と人間の恐ろしさに改めて身震いした。

あのシーンで泣き晴らして、
【少女は白人でした】で深く打ちのめされて、心をどつかれた後に迎える清々しいラストは、掴むもん全て掴まれちゃった!!と言っても良いくらい素敵。

感動を言葉で表すのは難しいが、エンドロールの曲が勝利を表しているような雰囲気で気持ちをさらに高めてくれる。

最初のうちは、知ってる人が沢山出ていて嬉しいだとか、若かりしマコノヒーの男前さが異常でときめきでクラクラしてたんだけど、気付けば法廷の中にいるかのような心境になって、あっという間にのめり込んでいた本作。

肌の色で刑罰まで変わってしまうアメリカ合衆国の実情や、色々な人種の集まる合衆国だからこその複雑な歴史…を考えされられる。

黒人が当たり前に殺されて、木に首をくくりつけられてしまった時代の恐ろしさや酷さ、アメリカ合衆国に限らず同じ人種間でも殺し合う人間の恐ろしさには参ってしまう。

人間の本質は 接客業をやっていると垣間見る瞬間(店員を人と思ってない人間)は多いが、日本人も偏見のある人は結構多い。
人種間でなくても、病気や障害など様々だが…口に出さなくても目に嫌悪感が出ている人間を目の当たりにした事があるので、「評決のとき」の内容は本当に深いところに刺さりすぎて、観終わってしばらくして現実に帰ると恐ろしくなってきてしまう程だった。

よく人間は美化されるけれど、遺伝子レベルで違うものへの偏見や差別が埋め込まれているのか?と思いたくなるくらいに現実は酷い。

この映画を観た事で、私がこれから何かに直面した時に、しっかり自分の良心でコントロール出来るように…という戒めにもなりました。

法廷物は面白いものが多いけれど、特に光っていました。

人種差別の恐ろしさや、立ち向かう事で起きる代償、それでもめげずに向かっていった先の勝利、この上ない清々しさを味わえる名作である「評決のとき」。

是非とも観ることをおすすめします。最高でした。
みほみほ

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