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クロノスのふきのレビュー・感想・評価

クロノス(1992年製作の映画)
3.5
吸血鬼が登場する映画ではあるが、タイトルが示唆する「永遠の時間」を得るためのマクガフィンであり、お話の大半は普通の人間がそれを求めて右往左往するに留まる。そのため、いわゆるジャンル映画としての「吸血鬼もの」の分かりやすい面白さは本作にはないので、そこを期待すると肩すかしを食うだろう。かといって「永遠の時間」に関する“お話的な”掘り下げもあまりないので、お話としては正直弱い。

しかし本作の魅力の大部分は、クロノスという小道具だろう。外装や挙動もさることながら、セットで作ったと思しき内部メカニズムの緻密さと、そこに共存する生命体の気持ち悪さの両立が、なにしろ美しい。現代世界に蘇った金と黒と赤のゴシック感も、もう「デル・トロ監督っぺー!」とゾクゾクする。
ヒットメーカーと化して多量の予算を注ぎ込めるようになった近作と比べれば、絵的なインパクトは弱いので、限定公開かつ興行的に大失敗だったのも仕方がない。それでも嫌いになれない作品の一つだ。

「使用者を吸血鬼化させる自動機械」というと『ジョジョの奇妙な冒険』の第一部を思い出すが、日本の漫画に詳しいデル・トロ監督は『ジョジョ』も知っているのだろうか。それとも更なるイメージソースがあるのだろうか。気になる。
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