コーカサス

セントラル・ステーションのコーカサスのレビュー・感想・評価

セントラル・ステーション(1998年製作の映画)
3.8
リオデジャネイロのセントラル・ステーションで手紙の代筆屋を営む初老女性ドーラ (モンテネグロ)が、交通事故で母親を亡くした少年ジョズエ (オリヴェイラ)と共に、まだ見ぬ彼の父親を探す旅に出るロード・ムービー。

かつて教師だったドーラは、今では代筆屋というその日暮らしの仕事に身を落とし、文字を書けない人たちから料金を取るものの、書いた手紙の殆どは出さずに破り捨ててしまうという、“良い人”と呼ぶには程遠い人物であり、一方の少年ジョズエも中々の生意気で、口は達者なうえ盗みまで働く悪童だ。
しかし、そんな“似た者同士”が徐々に心通わせ、共に成長していく姿を見ていると、その感覚や感情が痛いほど伝わってくるから不思議である。

観賞前は、如何にも“良い人たちばかり” の、嘸や汚れなき心洗われる物語であろうと思いきや、実際に蓋を開けてみれば決して“綺麗事ばかりではない”リアルな描写に、ベルリン国際映画祭で最優秀作品賞と女優賞、またゴールデングローブ賞で最優秀外国語映画賞を受賞したのも頷ける。

ドーラ「あんたも私を忘れる」
ジョズエ「忘れないよ、絶対に」

“大きなトラックの運転手になりたい”と願うジョズエの夢が叶った時、真っ先に思い浮かべる人物は、彼がまだ9つの頃一緒に父親を探す旅をしてくれた女性、ドーラのはずだ。

145 2022