唯

カラーパープルの唯のレビュー・感想・評価

カラーパープル(1985年製作の映画)
3.6
この時代には父親としてのロールモデルというものが存在しないから、暴力を振るうことに何ら抵抗がなかったり女を敬うことが理解出来なかったりといったことがまかり通ってしまっていて、女性はそんな男達に屈服し続けるという構図が一般化している。
だが、そんな中でもソフィアやシャグは、女性としての自分に誇りと尊厳を持ち、男と闘うことで自分の人生というものを諦めずに生きて来た女性達。
そう考えると、いつの時代であっても、自分の生き方を時代のせいになど出来ないよなあと教えられる。

とても過酷な状況でありながらも、小さなところに楽しみを見出すといったことで人生を生き抜こうとする意志が彼らにはあり、深刻になり過ぎずからっとした作風である。
セリーにも常にどこか冷静な目線というものがあって。
そんな彼女がシャグに衣装を着せて貰ってにたーっと笑うシーンがあるのだが、その屈託のない笑顔があまりにもあどけなくて。
愛を受けないままに育って来て、教育も施されず、いわゆる人としての普通の経験も少なく、愛を欲した子供のまま大人になってしまったことが窺い知れるシーンだ。

セリーは男に立ち向かう勇気がないのがいけないと言ってしまえばそれまでなのだけど、刃向かうことは命を危険に晒すこととイコールの状況なわけで。
男は知性や理性がなくても腕力だけで女をねじ伏せられるから馬鹿なままなのだ。

そんな男達に蹂躙され続けた女達の間に通う友情だけは本物であり、女性同士の友情は今作を救いのある物語に仕立てるエッセンスの一つ。

妹の帰国とシャグからのメンフィスへの誘いもあり、やっと夫へ積年の想いをぶちまけられるセリー。
寄ってたかって女を笑い物にして全てを否定する男達の姿はもはや哀れ。
そうでもしないと自分を守れないとでも思っているのか、なんと情けない。
男が女を貶めようとするのは自己保身のためであるし、自分に自信がないからであることは間違いない。
19世紀初頭ならまだしも、現代にもこうした女を奴隷の様に扱う男がいることがまた恐ろしい。

黒人女性の数だけこうした暗い人生があったのかと思うと、ただただ胸が苦しくなる。
映画やドラマでは奇跡も起こるが、実際は稀だったのだよなあ。

幼少期や少女時代に受けた傷を抱えたままでいると、何をしてもどこに住んでも心は満たされないのかも。
インナーチャイルドの問題を癒してあげることも必要。

ウーピーの多彩な表情や起伏のある感情表現が最高に素晴らしい。
唯