シズヲ

ロッキー2のシズヲのレビュー・感想・評価

ロッキー2(1979年製作の映画)
3.6
ロッキーVSアポロ再び!伝説的な対決を繰り広げた前作からそのまま繋がるシリーズ2作目。自分は1作目を大傑作だと思っているので、こちらはどうしても評価が厳しくなってしまう節はある。

『ロッキー』は無名ボクサーのサクセス・ストーリーがそのまま無名俳優だったスタローンの境遇に重なっていたことが魅力の一つだった。本作はそこを悪い意味で継承している節があって、中盤に至るまで“売れっ子になって調子に乗りつつ迷走を極めるロッキー”が延々と描かれる。この辺りのダラダラした展開はあまり面白くないし、まさしく売れっ子になったスタローンとも重なるので何とも言えぬしょっぱさがある。

エイドリアンの「勝って」のシーンも意図は何となく伝わってくる(ずっと傍にいてくれたロッキーの真摯な想いに応えて懸念を振り払ったのだと思う)けど、そこに至るまでの明確な心情描写が欠けているせいで微妙に乗り切れなかった。スタローンの演出はやりたいこと自体は分かるけどやや精彩に欠ける印象が否めないし、それだけに決戦に至るまでの盛り上がりも前作には及ばない。あちらはロッキーの掘り下げやエイドリアンを始めとする周辺の人間関係がしっかりと終盤のボルテージになっていただけに尚更思う。また本作に関して言うと、焦燥に駆られて“挑戦者”になったアポロの方ももう少し掘り下げてほしかったなあと思う。

ただロッキーの素朴で繊細な人物像そのものは相変わらず魅力的。後遺症からボクサーとしての人生を捨てようと模索し続ける葛藤、エイドリアンと結ばれ父親になったことへの想いなど、彼の人間味が随所で描かれているのが味わい深い。コーチとしてロッキーを支えるミッキーや義兄であり友人でもあるポーリーなど、脇役サイドの面々が前作より掘り下げられているのも良い。印象的も場面はちらほらあって、雪景色の動物園でのプロポーズなどエイドリアンとの掛け合いは何ともいじらしい。そしてビル・コンティのスコアは相変わらず燃える。

精神的再起からの特訓シーンは様式美のような盛り上がり方でやはり憎めない。ランニング中にめちゃめちゃ沢山の子供達が付いてくる場面はある意味でインパクト抜群。ラストを飾る決戦も前作以上に壮絶。本気を出したアポロの猛攻がとにかく凄まじく、それに真っ向から挑むロッキーの驚異的なガッツも圧巻。最終ラウンドでぶっ倒れそうになりながら決死の攻防を繰り広げる姿はまさに死闘そのもの(KO勝ちを狙うアポロの闘志が熱い)。レフェリーがカウントを数える中で“どちらが先に立ち上がるか”という最後の戦いも典型的ながら素晴らしい昂揚感に溢れている。
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