真鍋新一

南海の狼火(のろし)の真鍋新一のレビュー・感想・評価

南海の狼火(のろし)(1960年製作の映画)
3.8
日活はシリーズモノでもわかりやすいタイトルをつけてくれないので、ちゃんと調べてからじゃないと順番通りに観られない。「流れ者シリーズ」の3作目らしい。

話のつながりはまったくないのでどこから観ても気にならないのだが、後世の人間からすると作品を追いかけづらく、大人気シリーズの割に不当に評価が低いのはそのへんに理由がありそうな気がする。

もっとも、毎回驚くほど話が似ているので、シリーズであることを強調しすぎると変化の乏しさが露呈するので敢えて各作品を独立させようという、作り手側の事情もありそうだ。

アキラ、ルリ子、ジョー、マリ、金子信雄とここまで揃えば、だいたい何が起こるかは序盤でわかってしまう。そのお決まりのパターンがもはや様式美のレベルに到達しつつある。キャバレーの話が前フリ的に出てくれば、次に来るのはもちろん白木マリのダンス。いよっ、待ってました! の呼吸が途切れなく続く。今回はさらに第三の男・内田良平もやってきて、ひとつの街に最強の流れ者が3人もひしめくことになる。

今回のジョーは坊さんで、殺しながら念仏を唱えるという不道徳の極みを突き進む。金子信雄はルリ子を序盤から堂々と襲おうとするなどかなり悪い奴。若い中田博久に夢中になる白木マリの、見た目は不良・中身は純情なキャラクターも何度観ても素晴らしい。岡田真澄はその実力に見合わないケチな役柄でもったいないが、よくわからない人が演じるよりは遥かに存在感がある。
真鍋新一

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