ほーりー

パリ、テキサスのほーりーのレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
3.7
週末は疲れますぁね。アイコンを疲れ切ったピエロのおっさんに変えまして、チョイスする映画も疲れ切ったおっさんが主人公の本作を。

ヴィム・ヴェンダースの代表作であるロード・ムービー。それまで端役専門だったハリー・ディーン・スタントンを主役に起用したこともエライが、他の皆さんも口をそろえて指摘する通り、ナスターシャ・キンスキーの美しさが際立っている。

先に言っちゃうと、僕はまだこの映画を理解するに至っていない。何故なら自分の人生経験値がまだ全然足りていないから…。

トラヴィスが失踪する経緯、そして最後の彼の決断について、確かに映画の中で描かれているが、それが納得できるような、自分の身体の中に染み込んでいくには、まだまだ時間が掛かりそう。

自分はまだ、相手を好きすぎて、相手を傷つけてしまう(自分自身も)ほど、人を愛した経験がない。
そして、傷の重さに耐えきれず、何もかも捨てて当てもない旅に出た経験もない。

町山智浩氏が「映画は人生の予行演習」と言っていたが、自分はちょっとニュアンスが似ているが、「映画は人生の模範解答」だと思う。

生きる上で、色々な悩みや苦しみにぶつかって、その中から自分なりの答えを見つけるのだけど、これがなかなか上手く言葉や形で表現できないもの。
「それはこういうことだよ」と答えを出してくれるのが、映画なり小説なり歌のような気がする。

だから実生活において答えを導くまでのプロセスを経てこそ、はじめてこういう映画を理解できるのではないかと思う。最初から解説なしの答えだけ見ても頭に入ってこないわけである。

今後、色々な経験を積み重ねることで、今はこの点数が、4.0⇒4.5⇒5.0になっていくのだと思う。

じゃあ全く理解できない映画かというとそうでもなく、親子愛、男女のすれ違いによる心の機微などの描き方が秀逸である作品は確か。
特に前者では、息子と道路挟んで一緒に帰宅する場面、後者では、ガラス越しでの長回し(途中、キンスキーの顔が影一色になるのが実に巧い)の場面では、思わず唸ってしまった。

あとこれは私の持論ですが、ガラス越しの場面が出る映画は、大体いい映画です。
ほーりー

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