矢吹

パリ、テキサスの矢吹のレビュー・感想・評価

パリ、テキサス(1984年製作の映画)
4.3
飛行機なら数時間でロサンゼルスに。
光の速さなら3秒でヒューストンに行ける。
ネオンの馬の足。
それでも歩いてみる。車で行ってみる。
いつ出発?
Right now
主人公の時間の感覚がめちゃくちゃ好きだった。
4年は子供の人生の半分だけど。

あんな始まり方からこんな終わり方。
予測不能だわ。
脚本ももちろん素敵だったけど、
映像がすげえのなんの。
みんなの気持ちがすげえ伝わる表情とカメラワーク。なんてこった。
序盤の謎だらけと兄を心配する弟、徐々に打ち解ける父と息子の距離感、それを見つめる兄嫁の不安。
それぞれのやり取りで笑っちゃったりしながらも、みんな優しさがあったから切なくて
音楽も相まってね。
昔の思い出8ミリ映画はほぼ反則だし。
心がどこか懐かしくなっている。
綺麗な背景の節々で、
以前行ったアメリカ旅行を思い出した。
かなりそのせいだとは思うけどね。
それは、奥行きを深く保つロングショットが全部美しいからなんだよな。
車の中でも窓からの景色をたっぷり写しとる。
ロングテイクの息遣い。
画面の中の色の統一。
赤、青、緑。
ライティングもやばい。
彼女と息子の再会を見守った
彼の顔と、焦点を浅くした背景。
かなり心に響くよ。心象風景。
ぼやけた、ばらけた配色は、ぐちゃぐちゃだけど綺麗なまま。
なにも持たない序盤の彼の背景はかなり視覚的にスッキリしてたのに、中盤の会話のシーンや、終盤のいろいろ背負った末には、あれですよ。
鏡を見て、徐に歩き出していた彼。
炎から逃げたあの頃と、
ついに振り返った男。
彼女と重なる彼の顔。
最初は息子が子供のような父を見下ろし
徐々に父として息子は彼を見上げるようになる。
なんかもう、全部が全部よかった気がしてきた。
なんたるロードムービー。最高だった。

この世にはどこにも逃げ場がない。
全部地獄だ。ごまかすな。
おれは忠告したぞおじさんのインパクトが強い。
矢吹

矢吹