カリカリ亭ガリガリ

ファインディング・ニモのカリカリ亭ガリガリのレビュー・感想・評価

ファインディング・ニモ(2003年製作の映画)
5.0
過去に囚われて未来を恐れていた過保護な親が、"子離れ"ではなく、自分の子供への信頼の獲得によって子をセカイへと送り出す側になり、そして自らも過去の自分から脱却する物語。オーソドックスな作劇を魚でやって成功しちゃってる。

マーリンがウミガメの年齢をニモに話してあげるところとか、ラストのニモが登校時に忘れ物した!って言ってマーリンに抱きつき「パパだあいすき」「パパもだよ」のくだりとか爆泣き。
子供の頃はさらわれる側のニモの目線にも感情移入して観ていけれど、大人になってからは完全にマーリンへの強い共感。マーリンの哀愁溢れる表情がいちいち涙腺を刺激する……ってか悲惨すぎる冒頭から泣きなんだよ。「パパが必ず守るからね」うおおーん。
ペリカンのナイジェルがニモに向かって「お前の父さんはサメと戦ったんだぞ!しかも3匹相手だ!」と、マーリンとドリーの冒険を必死に語るところも、それを笑顔で聞くニモの切り返しズームで泣いてしまう。『ジェダイの帰還』の、エンドアでイウォークたちに冒険の話をするC3POを思い出す。人が冒険を語る時、それはおとぎ話的なエモさなのかもしれないけれど、どうしてこんなにもアツいのか。

当時映画館で観た時はとにかくドリーがキテレツで大好きでめちゃ笑っていたけど、『ファインディング・ドリー』を観た後だと彼女の挙動のひとつひとつの意味合いが変化して泣ける……いやさ、当時からこのキャラクターの奥深さ(普通と違う)みたいなものはなんとなく感じてはいたけれど、成長して理解できる彼女の孤独や哀しさが巧み……マーリンに対して絞り出すように訴える「あなたと一緒にいると、落ち着くの」で毎回泣いてしまう。

歯医者の水槽パートの火山の上を通り過ぎる通過儀礼が妙に印象に残っていた。ニモが本当は海でやらないとならないアジテーションを、ほとんど全部水槽で完了させて、だから彼が海に放たれて網に捕まった時に「下に泳ぐんだ!ぼくを信じてよ!」と言える息子になっていて、マーリンがハッと驚きニモを信じられる、観客もニモとマーリンの冒険を目撃しているからその言葉を信じられる、一緒になって「下へ泳げ!」って応援できる、アツい。

アル中セミナーならぬ「魚は友達エサじゃない」セミナーやってるホオジロザメからの逃走とか、ちょうだいカモメからの逃走とか、結構チェイスシーンが多い。海中のチェイスは予想していたけれど、割と容赦ない空中チェイスがあったのは良かった。クラゲの毒針を避けながらの競争も、危機回避のスリルというよりも、その美しくもおぞましい映像がもはやロマン。

「シドニーワラビー通り42ピーシャーマン」って、みんな言えたよね。