deenity

誰も知らないのdeenityのレビュー・感想・評価

誰も知らない(2004年製作の映画)
4.5
子どもを置き去りにした実際の事件を元にした作品。正直言葉が出ない。事実を目の当たりにした衝撃もある。いい加減な大人の無責任さに対してでもある。子供たちの生きる様と繋がりを求め続けた様にでもある。淡々とした映画と細部までリアリティを追求した演技もである。テーマが大きすぎて、一度の鑑賞ではとても語れない。考えるべきことが多すぎて、また、考えても見て見ぬふりをしたいのかもしれない。今作の持ち合わせる生々しさにとにかくやられた。

結局『誰も知らない』という題名通り、必死に生きる兄弟を世間は知っていようと知ってなかろうと知らぬ顔を続けてしまうのかもしれない。世間の冷たさを感じるが、もちろん自分もその一人だ。綺麗事は言えない。気付いていても、どうにかするために動くかと言われると言葉に詰まる。
コンビニ店員なんかはいい例だ。知っていて気にかける。それでも本質的には助けない。余り物を与えてサポートしているが、やはり本質的な助けにはならない。他人というのは優しいようで冷酷でもある。冒頭では「上手く見つからないようにしろよ」と思ったにも関わらず、終盤では「早く誰か通報してやれよ」と思う。自分もコンビニ店員と何も変わらない。たぶんコンビニ店員も同じ感情だったのかもしれない。

それでも驚いたのは兄の明が兄弟の繋がりを求め続けたこと。どれだけ自分が辛くてしんどい状況でも、兄弟と離れることだけは避けたいのだろうか。考えさせられる。

子役ながら全員が抜群の演技を続けていて、映し出される全体に漂う雰囲気も含めて、本作の雄弁さには衝撃を受けた。
deenity

deenity