ゴダール作品でも知名度が高い本作は、公開当時、10代の若者や映画ファンの熱狂ぶりが凄かったという。
映画の概念を覆すような実験的な試みが沢山ある。ルノワールのような抽象画からポップなイラストまで幅広いアート作品を映像に挟み込んだり、登場人物たちの会話は詩句を引用したり反復法を用いたりと、センスのさじ加減も絶妙だった。
現実の生活に我慢ができず、久しぶりに再会したマリアンヌに惹かれていくフェルディナン。気付いた時には後戻りが出来なくなり、非行を繰り返しながらの逃亡劇が続いていく。
趣味趣向が全く違う二人。クリエイティブで内向的なフェルディナンと外交的で変化を好むマリアンヌの会話はどこかチグハグ。互いを理解しているようでしていなかったり、仲が良さそうに見えてすれ違っていたり。
不安定で矛盾を抱えていても、お互いが大好き。これが二人を繋ぐ全てだ。
マリアンヌといることを選んだ時点で、フェルディナンの破滅への道は既に築かれていた。
彼女からピエロと呼ばれても訂正し続けきたフェルディナンが、気狂いピエロになってしまったのは切なく苦しい。
モノクロのゴダール作品に慣れてきたところで本作を観ると、鮮烈な赤、黒、青の色合いが脳裏に焼きついて暫く消えない。