「独裁者」では若く溌剌としたチャップリンの多才なクリエイターぶりが表れていたが、「ライムライト」では世界的スターとして浮き沈みの激しい人生を歩み達観した彼だから出来る素晴らしい演技を見せてくれている。
同じアパートに住む若く美しい女性テレーザと年老いた道化師カルヴェロの切なく美しい物語。
精神的に脆く壊れそうなテレーザと、道化師としてスランプに陥るカルヴェロ。収入がなく未来も不透明な二人だけど、幸い孤独ではなく、寄り添い励まし合いながら毎日を生きていく。
人生が上向きになってきたテリーが、支えられる側から今度は支える側になって献身的にカルヴェロをサポートする姿が愛おしい。
テリーの気持ちを想って距離を置いていくカルヴェロが切ないけど、二人の関係は、互いしか理解できない尊く美しいもの、と意義付けることで観る人の心に深く刻まれていくように思う。
劇中のバレエと現実を上手く繋げてくる演出は凄い。冒頭のナレーションからある程度予想していたラストは、いざ目の当たりにすると涙が出た。チャップリンが本作で見せてくれた表情全てに目頭が熱くなった。