LalaーMukuーMerry

ローズマリーの赤ちゃんのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

ローズマリーの赤ちゃん(1968年製作の映画)
4.1
ディズニーのドタバタ喜劇(たしか「黒ひげ大旋風」)と2本立てで上映されたのを子供の時見ました(なんでこんな組合せやねん!)。ローズマリーがベットに裸で寝かされて血のような赤い液体で胸から下腹部にかけて線を書き込まれるシーンは、見てはいけないものを見たのではないかと子供心に感じました。そのシーンだけが強烈に残っていて、ストーリーは何も分からなかったことだけを覚えている(ついでに言うと、もう1本の方も何も記憶にない)。男と女のことも何も知らない子供だったから仕方がない。どんな話だったのか長い間気にはなっていたのだけれど、今頃になってようやくの鑑賞。
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なるほど、そういうお話でしたか。オカルトの名作と言われるだけのことはある。気持ち悪いシーンも怖~い映像も叫び声も一切なく、音楽も控えめですが、ラストに至るまでのエピソードの積み重ねがじわじわと迫って来て引き込まれる。妊娠していて、影響を受けやすい女性にはお勧めできませんが、それ以外の人には結構お勧めできる優れた作品と思いました。
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だけど、かなり穿った見方をすると、障害を持った赤ちゃんを産んでしまった母親がその子を自分で育てますという決意で締めくくったお話ということも出来る(赤ちゃんの目が生まれながらに異常だったのか、周囲がそうしたのか定かでないが、ここでは生まれながらと解釈する)。だから、ポジティブに受け止めればローズマリーはとても勇気ある女性だ、頑張れ!と応援してもいいくらいの話だ。
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作品制作当時(1968年)は、LGBT、障害者、ハンセン病(ライ病)患者等に、まだまだ社会は冷たかった。そのことは宗教によらない。欧米では悪魔に取りつかれた子とされ、日本でも悪霊のたたりとされ、社会と隔絶された。社会がこういう人たちにも光を当てるようになったのは、ほんの最近のことだ。
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人は自分達と異質なもの、理解できないものが、気味悪くて恐ろしい。これは本能的なものだ。だから理解しようとはせず、排除しようとする。人権の考えは持っていても、こういう人たちに適応しない事がおかしな事だとは思い至らないのだ。中世のキリスト教から派生した魔女伝説や悪魔払いの儀式なども、結局のところ人間のある意味本能から来ている。
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今の社会ではこの作品のようなことあるはずないと思うけれど、それは決して当たり前のことではない。怖~いといって騒ぐだけでなく、中世の暗い状態を克服して今日の状態になるのにどんな人々がどんな努力をしてきたのかを想像してみるとよいのではないかな。人間の本性は変わるものではない、ということは中世に後戻りする素地が現代人のこころの中にもしっかりあるということなのですよ。
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(カルト(異端)作品には、カルトなレビューでした)