KANA

ドクトル・ジバゴのKANAのレビュー・感想・評価

ドクトル・ジバゴ(1965年製作の映画)
3.8

名作再鑑賞シリーズ

母が好きな作品。
昔一度観たきりで、細かいところはすっかり忘れてたので改めて録画鑑賞。
(しっかりインターミッション挟みました笑)

壮大なスケールのドラマなら右に出るもののないデヴィッド・リーン監督が『アラビアのロレンス』に続いて紡いだ大河ドラマ。
ロシア革命後の激動の時代を舞台に、医師で詩人でもある主人公の生涯を、2人の女性への愛を中心に描く。

ユーリ・ジバゴの人柄をずっと観察してると、とても不義の確信犯とは思えない。
誠実で思いやりにあふれてて紳士的で。
そう強く感じさせるような好対照をなしているのが低俗な弁護士コマロフスキーの存在。
やなやつ やなやつ やなやつ!

ユーリの妻トーニャ(チャップリンの実の娘)はとても献身的で可愛らしいし、
ラーラはフレンチロリータみたいなコケティッシュな危うさがあって魅力的だし、
どちらも近寄りがたい美人というよりは可愛い系で、ユーリが守りたくなる感じなのかな?
でも2人とも中身はタフ。
どちらも互いの事を「素敵な女性ね」って彼に嫌味でなく真心で言える清さは、逆に胸が痛むほど。

それにしてもあれがああなってこれがこうなって、、広い広いロシアの地で 3度も巡り会うなんて。
運命の悪戯が罪。
そして路面電車のシーンの歯痒さ。
でも、その無念こそがいい。
エピローグ、娘の背負うバラライカにジ〜ン。冒頭の伏線、巧いなぁ。
重厚でメランコリックな『ラーラのテーマ』もドラマを彩る。

製作当時は米ソ冷戦下でソ連での撮影許可が下りるはずもなく、実際はスペイン、フィンランド、カナダでロケをしたそうだけど、再現されたロシアの壮大な風景が本当に美しい。
印象的なのは、一家が田舎に疎開する際の延々に続くかのように感じる汽車旅のシークエンス。
真っ白な地平線の風景とともに、これぞロシア、これぞシベリア鉄道と思わされる。
モスクワでの革命運動やWW1前線でのカオスな状態からの、春の田舎の麗かさのコントラストも見事。

メロドラマ的には正直少し冷めた目で観てしまってる自分もいたけど、
この時代のロシアについて歴史的出来事から風俗までいろんな事を目で見て追体験し、学べるという点では間違いなく素晴らしい作品。
KANA

KANA