むらむら

ジュラシック・パークのむらむらのレビュー・感想・評価

ジュラシック・パーク(1993年製作の映画)
5.0
※今回、オッパイも何も出てこない、「まとめ系YouTuber」のどーでもいいネタと同じレベルのつまらない話なので、読み飛ばしてもらって良いです。映画の感想ですらありません。

ここんところゲーム(PSの半額セールで買った「13機兵防衛圏」)ばっかりやってて全く映画観ておらず、filmarkもご無沙汰してたのだが、日本で全く報じられてないのに、昨日からハリウッドを席巻している話題があって、書いてみることにした。

それが

「CAAがICMを買収する」

という9月28日付けのニュース。

CIAとかICBMみたいな略称で

「えっ、戦争の話?」

と誤解されるかもしれないが、この二社ともハリウッドの「4大エージェンシー」と言われる超大手エージェント会社。

CAAが業界2位で、ICMが業界4位。

言い換えれば、アサヒがサッポロビールを買収する、みたいな話。

これがいきなり発表されたので業界中が驚愕←いまココ。

■エージェント会社とは

日本で言う芸能事務所みたいなものなのだが、ハリウッドというかアメリカの場合、日本みたく俳優が会社に完全に専属するのではなく、俳優が「映画やTV出演に関わる全ての交渉」をエージェント会社に任せる、というのが一般的。

エージェント会社は映画出演契約の10%程度を、コミッションとしてアーティストの出演料から受け取る。

なぜこの話を「ジュラシックパーク」のレビューに書いてるかは、あとで説明するので脇においておくとして、エージェント会社は、簡単に言うと、俳優の、映画出演に関する全てを仕切っていると言っていい。

俳優に限らず、映画監督や脚本家、作家も同じく、エージェント会社を使っている。脚本料や監督料の10%を支払う代わりに、映画スタジオ探しなどをやってくれる、という構造だ。

CAAでは、ブラッド・ピット、トム・クルーズ、ダニエル・クレイグ、ロバート・デ・ニーロ、クリス・ヘムズワース、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビーといった超有名俳優やスピルバーグ、スコセッシといった超大物監督がクライアント。

ICMでは、サミュエル・L・ジャクソン、ジョン・トラボルタ、こないだ観たばかりの「ソウの新しいヤツ」に主演してたクリス・ロックなどがクライアント。

俺たちが知っている俳優たちは、こういったエージェント会社と契約しているのだ。

■CAAの設立

CAA(クリエイティブ・アーティスツ・エージェンシー)が出来たのは、1975年。

当時の最大手エージェント会社だったWMA(ウイリアム・モリス・エージェンシー)を飛び出した若者5人が数千万円を借金して設立。

この5人で一番若かったのが、マイケル・オーヴィッツ。当時29歳。

他の4人を押しのけて社長に就任し、後述する様々な革命でもってCAAを凄まじい成長ぶりで業界トップの地位にまで引き上げたのに、1995年に

「ディズニーの次期社長になれるもんねー」

と、自分の会社を放っぽらかしてディズニーの副社長に就任。

なのに勝手すぎる振る舞いをして、たった一年で追い出される、っていうメチャクチャな人なのだが、興味ある方は、彼自身の自伝「LEGEND(レジェンド)ハリウッド最強のエージェント(日経BP)」に詳細が書いてあるのでオススメする。

ディズニーでのマイケル・オーヴィッツのエピソード:

オーヴィッツ「マーティン・スコセッシの新作、ディズニーで契約したわ(ドヤッ)」
社長「えっ、どんな内容なん?」
オーヴィッツ「ダライ・ラマ」
社長「えっ?」
オーヴィッツ「ダライ・ラマの伝記映画!」
社長「……」
オーヴィッツ「これはいい映画になるで!」
社長「……キミ、中国とダライ・ラマの関係、分かってる……!?」
オーヴィッツ「ふわっ!?」
社長「さらに俺ら、今度中国で、大作アニメ上映する予定なんやけど……」
オーヴィッツ「くぁwせdrftgyふじこlp //!!」

結果、中国からの圧力を受けまくったディズニーは、制作はしたものの超小規模でこの映画「クンドゥン」を公開。興行的にも惨敗すると共に、当時中国で大々的に公開するハズだったアニメ「ムーラン」の公開を8ヶ月も延期させられている。

■CAAの革命

俺の主観だが、CAAの行った革命は3つ。

1.エージェント会社を「ほうれんそう」の組織に

それまでのエージェント会社、例えばWMAは、個人エージェントの集まりで、それぞれ各エージェントのプライドが高く、横同士で繋がりが薄かった。対してCAAでは、各クライアントの情報や映画スタジオの情報を全員で共有。チームで動くことによって情報の活性化を図っている。

マイケル・オーヴィッツはこの組織作りに関して、「日本企業のやり方を参考にした」とコメント。

以下、ちょっとだけ余談。

日本好きで、その後、松下のMCA(ユニバーサル)スタジオ買収(※)を主導したマイケル・オーヴィッツは、趣味で空手を習っていた。

その時の師範が、めっちゃキレッキレの動きをするスーパーアスリートだったことに注目。

「師範、ちょっと映画出てみない?」

と誘って、ハリウッドのスタジオ幹部の前に連れていき、いきなり目の前で空手のアクションを披露させ、見事、映画主演の座をゲット。

その師範の名前は、スティーヴン・セガールという。

※上記「LEGEND」ではソニーのコロンビア買収も主導したように書かれてます、他の本とか読んでも、こっちはそんなに詳細が書かれてないので、ソニーの件に関しては「主導」ではないと思います。

2.「パッケージ」と呼ばれる方式のハリウッドへの定着

これは後述。

3.クライアントの多角化

それまでハリウッドがビジネスの中心だったエージェント業界構造の中で、いち早くケーブルTVの時代が来ることを見抜き、テレビタレント部門を強化。

有名なところでは、「レイト・ナイト・ウィズ・デイヴィッド・レターマン」のNBCからCBSへの移籍などを仕掛けている。日本で言うと「ミヤネ屋」がフジテレビに移籍する、と想像してもらえばいいかも。

その後、タレントだけでなく企業PR全般や、前述した企業買収のコーディネートなどにも進出。

企業PRではコカ・コーラの世界PRを広告代理店と競り勝って、1993年の「ホッキョクグマがコーラを飲む」という当時印象的なCMなどをプロデュース。この仕事でも、クリエイティブにCAA所属の映画監督を使うなど、リソースを最大限に活用しており、「ほうれんそう」の思想が生きている。

また、当時は大きなビジネスと見られていなかったライブ・コンサートツアーにも目をつけ、敏腕エージェントのトム・ロスをヘッドハント。トム・ロスは内部抗争で1998年にCAAを去っているが、現在でもCAAには、レディガガ、スティーヴィー・ワンダー、AC/DCといった超大物アーティストがクライアントとして契約。

その後、これは現在の経営者であるブライアン・ロード(※1)やデヴィッド・オコナーの功績だが、スポーツ業界にも進出。デヴィッド・ベッカムからレブロン・ジェームズ率いるNBAマイアミ・ヒートのBIG3(※2)、さらにはオリンピックの参謀まで、スポーツ界でも大きな存在として君臨している。

※1 ブライアン・ロードの元奥さんは「スターウォーズ」のレイア姫こと故キャリー・フィッシャー

※2 レブロン・ジェームズは2012年にCAAのエージェントだったリッチ・ポールの独立と共に移籍

■ハリウッドの「パッケージ」ビジネス

元々ハリウッドは映画スタジオが強く、スタジオが映画監督や俳優を決めるのが普通だった。

それを覆したのが、多くの監督や俳優を抱えるCAA。

例えば1986年に公開された、「ハスラー2」。1961年に公開された「ハスラー」の続編。監督のマーティン・スコセッシとポール・ニューマンの主演を前提に、CAAが映画スタジオに「パッケージ」として映画の企画を売り込み、大ヒット。世界中にビリヤードブームを巻き起こし、ほぼ同時公開された「トップガン」で主演し、この作品では若きビリヤード・プレイヤーを演じたトム・クルーズをスターダムに押し上げた。

もちろんトム・クルーズはCAAのクライアント。

その翌年に公開された「レインマン」もCAAのパッケージ。

そして、ようやくここで話は、「ジュラシック・パーク」につながる。

■ジュラシック・パーク

俺の主観だが、このCAAの「パッケージ」最大のヒットが、映画「ジュラシック・パーク」。

当時、映画業界からTV、出版業界にまで手を伸ばしていたCAAは、作家マイケル・クライトンとエージェント契約を締結。マイケル・クライトンの新作「ジュラシック・パーク」にスピルバーグをパッケージして、映画スタジオに売り込んだのだ。

結果は……もう、おわかりですよね?

「パッケージ」ビジネスの場合、俳優や監督のギャラからのコミッションに加えて、興行収入の利益から15%程度といった収入がCAAにもたらされる。

これはCAAに莫大な利益をもたらすと共に、映画製作の主導権を映画スタジオから奪い取ることに成功した。

キバヤシ「そう、ハリウッドは、CAAに支配されているのだ!」
ΩΩ Ω「えーっ! な、なんだってー!?」

こんな声が聞こえてきそうなほど、CAAは一時期のハリウッドを牛耳っていたのだ。

■そして現在

現在でも引き続き、CAAは超大手エージェントとして様々なエンタメ業界に影響力を発揮している。

たとえば公開中の「ミナマタ」。上に書いたように主演のジョニー・デップはCAAのクライアントだし、共演のビル・ナイもCAAのクライアントだ。ってことは、この作品も、おそらくCAAのパッケージの一環。

だが、ハリウッドでは、当時の7大メジャーからスタジオ数が半減。

特にディズニーは、ディズニーブランドの活用や、MCUという世界観での「有名俳優いらない」戦略、ディズニープラスでの囲い込みなど、完全に主導権を奪い返していると見られる。

なので、今回のCAAのICMの買収は、「大手企業のみが生き残る」という、現在、世界中で起こっている買収・合併合戦が、ついにエージェントの業界でも起こるんだ、という意味で興味深い。ちなみに前回の大型買収は、WMAをエンデバーという別のエージェンシーが巻き取った2010年のディール。

買収自体は、今後、公正取引委員会の査定を経て、年内には買収完了し、その後、上場を目指すと報道されている。

……とこんなビッグニュースなのに、日本の評論家や映画ニュースは全く記事にしてない。

TWITTERでも「大手サッカーエージェンシー、ステラーを抱えるICMが買収される!」ってスポーツ絡みの記事しか見当たらず。いや、映画メディアの皆さん、ちょっとは仕事しようよ……。

仕方ないので俺が通常は下半身に溜まっている血流を、鮭のように脳みそへと逆流させ、こんな長い与太話を頑張って書いてみました。

最後に俺がビックリしたCAAのクライアント。

2017年、ジョー・バイデンがCAAのクライアントになっている、という記事をさっき発見。

ΩΩ Ω「な、なんだってー!?」 (以下略)

(おしまい)
むらむら

むらむら