カツマ

ロスト・ハイウェイのカツマのレビュー・感想・評価

ロスト・ハイウェイ(1997年製作の映画)
3.9
分かろうと思えば思うほど分からなくなる。これは悪夢か、それとも現実か。気付けば我々は、デヴィッド・リンチが仕掛けた夢遊病のような世界にいつのまにか呑み込まれている。繋がりそうで繋がらない物語、そして底なし沼のごとく広がる果てのない道。真実は煙に巻かれたまま、自分の想像力の産物が優柔不断になっていくのが分かってしまう。『マルホランドドライブ』と共にリンチの世界観を決定付けた迷宮のようなサスペンス。迷っていることにすら気付かせない、彼の作品は出口のない闇の中へと溶けていく。

〜あらすじ〜

まずいくつかの説明できない事柄が起こる。ジャズ・ミュージシャンのフレッドはインターホン越しに『ディック・ロランド』は死んだというメッセージを受け取るが、彼には何のことかさっぱり分からない。そして後日、今度は玄関先に小包が届いた。その中にはビデオテープが入っており、録画されていたのはフレッドと妻のレネエの眠っている姿だった。
すぐさま警察に連絡したフレッドだったが、結局は何の解決もしないまま、妻と不穏の中で過ごすことに。パーティーに行ってもレネエは男友達と妙に仲良さげで、フレッドにはあまりに居心地が悪かった。そんな彼にある男が近づいてきて、こう囁いた。前にお会いしましたね、、と。フレッドはその男には心当たりなど無かったのだが・・。

〜見どころと感想〜

この映画の分からない部分をどれだけ許容出来るか。全体を俯瞰してみればパズルのピースは散逸しているため、一応パズルを完成させてみる。だが、そこが沼だった。完成させてみても、辻褄が合わない、説明できない事象が山のように転がり出て、いつしか自分自身がロストハイウェイを爆走していることに気付くのだ。

配役では一人二役を演じたパトリシア・アークエットが濡れ場も含めて体当たりの演技を披露。リンチの追い込みが嫌が応にも想像できるので嫌悪感は感じるが、それでも彼女はハードであったろう撮影を乗り越えて、その後も名女優として花開いていく。

このハイウェイには地平線が見えることがない。そこにあるのは闇。真っ暗な闇だ。
我々はデヴィッド・リンチが創造した闇のような迷路を彷徨い続けながらパズルのピースを拾い続け、完成しない絵を描き続ける。何とも酔狂だけれども、そこに陶酔を感じることも事実。彷徨えば彷徨うほどに、その闇の魅力は抗えないほどに蠱惑的で、我々の思考回路をジワジワとショートさせるのだ。
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