LalaーMukuーMerry

ジョゼと虎と魚たちのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

ジョゼと虎と魚たち(2003年製作の映画)
3.7
どんなにリアルに描かれていても映画は現実の恋愛(ゲーム)よりもドラマチックで感動的だ。見る側としてはハッピーエンドになってほしい、そうでない場合は考えさせるものを期待する。恋愛のいいとこだけを切り取って、その想い出話というのは、うーん・・・まっ、ありでしょうか、という程度。
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一人の人間の恋愛遍歴を深堀りもせず続けて見せられると、なんだかなぁという気になるし、たとえ一つの恋愛が丁寧に描いてあったとしても、結局別れましたと最後に知らされると、感情移入してた分だけアレレとなる。
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この作品もそんな感じだった。単なる恋愛ではなく、障害者と健常者との恋愛というテーマが主題でもあるから、アレレ感は大きくて、ちょっとわだかまりが残った。現実はこうだよということなのかもしれない。あるいは、良い思い出だけを残しておこうということなのかな・・・。この作品に関しては、私は描かれていないことの方に関心と疑問が向かってしまいました。
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池脇千鶴がよかった 
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ここまで、第一印象。
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いつかあなたはあの男を愛さなくなるだろう
そして、いつか僕もまた、あなたを愛さなくなるだろう
我々はまたもや孤独になる
それでも同じことなのだ
そこにまた流れ去った一年の月日があるだけなのだ
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この詩の内容はストーリーを暗示していたんやね。ストーリーを知って、ジョゼ(=池脇千鶴)と恒夫(=妻夫木聡)の気持ちを想像しながら見た2回目では、印象が全く違った。実家にジョゼを連れて帰る筈だったのに、ひるんでしまう恒夫。ジョゼはそんな恒夫に海に行こうと行き先を変えさせラブホへ・・・。二人に未来はわかっていた・・・
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切ないお話です。
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2003年の作品ですが、パラリンピックがオリンピックと同じ都市で開催されるようになったのが2004年のアテネ大会からだから、作品当時は障害者に対する社会の意識は今と比べればかなり低かったと思います。作品では障害者の家庭に対する福祉事業の紹介的な部分もありました。ジョゼはこれらに触れて人生に前向きになれたという面もあるでしょうが、それよりずっと大きいのは恋の力でした。それでも恒夫の中で一歩が踏み出せなかったのは、おそらく社会の壁でしょう(偏見、因習…)。今なら二人の恋の行方は変わっているのだろうか?
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池脇千鶴がとてもよかった