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紅夢のatyのネタバレレビュー・内容・結末

紅夢(1991年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

めちゃくちゃ良い。見始めた瞬間からエンドロールが終わるまで全てが良かった。こんなにも狭い舞台だけで、2時間たっぷり飽きないドラマが撮れるとは。中国様式の大屋敷の構造と、その機能が素晴らしく良く分かる点で、とても建築的な映画だと思う。4人の妻と、それぞれの家への入り口が並ぶ大きな外廊下、正門から帰る主人を迎える絵、とても閉鎖された世界。どのショットも、斗拱や瓦屋根、開口の装飾などの建築様式が美しく撮れていて、かつそれぞれが重なって相乗効果を生みだし、見惚れてしまうほど良かった。それに、タイトルにもなっている赤いランタンの効果も象徴的。寵愛を受けられること、自分が注目されていること、暖かいこと…。

夏、秋、冬と季節が巡ると、妻達の衣装が変わり、建築も雪化粧を施す。全ては主人を満足させるための舞台装置になっている。それぞれの妻が工夫を凝らして自分だけ主人に気に入られようと、蹴落としあい、いがみ合い、仲間を作ろうとするか、というドラマの部分もかなり良かった。最初は理解できなかったけど、これほどの狭い世界で暮らしていると、主人に認められて子供を作り、ここでの生活をより良くする以外の目的が無くなってしまうことに気づいた。狭い世界に閉じ込めることの効用と罪深さ。

京劇などに使う楽器の音が特徴的で、無音のものとの対比が凄まじい。季節が変わる場面や、重大な事実に気づく瞬間など、スリル満点な音楽で世界観に取り込まれる。とてもドキドキした。

「彼女は以前の第四夫人です。頭がおかしくなってしまったんですよ。」(自分なりの訳です)の一言で、今まで見てきたことに揺さぶりをかけられるのが怖かった。第三夫人が釣られたのはひょっとして幻覚だったのか?などと想像が掻き立てられる。
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