ほーりー

フレンジーのほーりーのレビュー・感想・評価

フレンジー(1972年製作の映画)
4.3
さて久しぶりに往年の巨匠の作品を。

恥ずかしながら自分はまだ前作『トパーズ』を観ていないので、本作を「評価を落としつつあったヒッチコックの復活作」であるとは断言できないのだが、「巨匠ヒッチコックの傑作のひとつ」であることは確かだと思う。

ロンドン中を騒がせている連続女性ネクタイ絞殺事件。今日も新たな犠牲者が出た。

被害者は結婚相談所の女社長。秘書が昼食で外出している間、社長ひとりが執務室にいた時の犯行だった。

警察の捜査により、事件が発生した時間に社長の元旦那が相談所を訪ねていることがわかり、すぐに男は指名手配を受ける、

元旦那はかつて空軍のエリートだったが今は落ちぶれてバーテンダーをしていた。しかし、そこも経営者と喧嘩してクビになったばかりだった。

元妻が殺害された新聞記事を見た彼は、自分が容疑者として追われていることを知り、同じバーで働いていたウェイトレスと一緒に逃亡する。

だが彼は知らなかった。元妻も含めて次々と女性を手にかけた犯人が自分のすぐ身近にいたことを……。

オープニングの空撮シーンからして、既に観客の喉元に食らいついて離さない。

テムズ川の岸辺で環境保全の演説をする大学の先生らしき人。「テムズ川は近い将来、汚い物は浮かばない川になることでしょう」と言ってる側で、女性の絞殺死体がプカプカ浮かぶという皮肉も痛烈だ。

首に巻かれたネクタイがアップされたあと、主人公が身支度してネクタイを絞めるカットへの繋ぎ方も実に見事。

新たな犠牲者が男の部屋に入ったあと、カメラが後退りに動いてやがて建物の外に出るまで無音状態になるシーンなんて思わず身震いする。

事件を捜査する警部の描写も面白い。奥さんが料理通で毎回訳のわからない凝った料理を作るのでウンザリしている姿が可笑しい。

そのくせ、事件の推理となると奥さんの方が警部より核心に迫っているのも面白い。

やっぱりヒッチコックは偉大なり。

■映画 DATA==========================
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:アンソニー・シェーファー
製作:アルフレッド・ヒッチコック
音楽:ロン・グッドウィン
撮影:ギル・テイラー
公開:1972年6月21日(米)/1972年7月29日(日)
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